ドナルド・トランプ米大統領は23日(米国時間)、自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルースソーシャル(TruthSocial)」で、ソラナ(SOL)ベースのミームコイン「トランプコイン(TRUMP)」を直接宣伝した。
トランプ大統領関連企業がこの暗号資産(仮想通貨・コイン)の80%を保有する中、彼の発言は即座に価格の急騰を引き起こした。

トランプ大統領は同日午前10時33分、トゥルースソーシャルに「I LOVE $TRUMP-SO COOL! The Greatest of them all!(トランプコイン大好き。超クール。史上最高だ)」と投稿した。
この投稿直後、トランプコインの価格は一気に12.25ドル(約1,840円)まで急騰したが、その後激しい変動を見せた。
24日(日本時間)午後3時20分現在、トランプコインは前日比9.62%上昇の11.95ドル(約1,795円)を記録。これは今年1月の発売時に記録した最高値75.35ドル(約1万1,320円)から84.13%下落した水準だ。
GCashのクリプト責任者、ルイス・ブエナベントゥラ氏(Luis Buenaventura)はディクリプト(Decrypt)とのインタビューで「市場がもはやトランプコインに大きな興奮を示していないことを示唆している」とし、「短期的な小規模利益を狙う投資家のみが関心を示している」と分析した。
トランプコインの公式サイトはこの資産が「投資目的ではない」と明記しているが、実質的にトランプ大統領の個人ブランドと彼の継続的な宣伝によって価格が左右されている点で論争を呼んでいる。
公職者による仮想通貨宣伝…倫理的論争が拡大
現職の米大統領が自身の事業に関連する暗号資産を公然と宣伝した前例はない。これを受け、倫理監視団体や業界専門家から利益相反の問題が提起されている。
デジタルメディア専門弁護士でARメディア(AR Media)CEOのアンドリュー・ロソウ氏(Andrew Rossow)は「公職を個人的な金銭的利益の手段として使用する危険な先例を作った」と警告した。
彼はこの事例が憲法上の3つの主要な問題を引き起こす可能性があると指摘した。
第一に、憲法第1条9項の「報酬条項(Emoluments Clause)」がある。これは大統領が議会の承認なしに国内外の機関から金銭的利益を受け取ることを禁じている。トランプコインの所有構造を考慮すると、匿名の海外投資家がこれを購入することで米国の政策に間接的な影響を与える可能性が指摘されている。
第二に、憲法第2条3項に明記された「権力分立(Separation of Powers)」がある。大統領は法律を誠実に執行する義務があるにもかかわらず、個人的な経済的利害関係のある金融商品を宣伝することで、米国証券取引委員会(SEC)や商品先物取引委員会(CFTC)などの規制機関の公正性を損なう恐れがある。
最後に、第5修正憲法の平等保護および適正手続条項(Equal Protection and Due Process Clause)に関連して、特定のコインへの特恵が暗号資産市場内の他のプロジェクトに不公正な競争環境をもたらす可能性があるとの指摘もある。
トランプ関連企業、トークン供給量の80%を保有
トランプ大統領の財務開示資料によると、トランプコインの主要運営会社であるCIC Digital LLCと、Fight Fight Fight LLCが全体供給量の80%を保有している。
これはプロジェクトの公式文書にも明記されており、これらの企業はコインの取引量増加と価格上昇によって直接的な財政的利益を得ることになる。
今回のトランプコイン発行は、トランプ大統領が最近公言した「米国を暗号資産大国にする」という政策と連動している。
彼はビットコイン(BTC)の戦略的備蓄計画を推進し、連邦準備制度(Fed)の独立性を縮小するなど、積極的な親暗号資産政策を展開することを約束している。
これに対し、欧州中央銀行(ECB)のフランス中央銀行総裁、フランソワ・ビルロワ・ド・ガロー氏は「トランプ政権の親暗号資産政策が世界金融危機の種をまく可能性がある」と警告した。
彼はフランス経済紙ラ・トリビューン・ディマンシュ(La Tribune Dimanche)とのインタビューで、「米国が暗号資産と非銀行金融を奨励することで金融規制の空白を生み出している」と主張した。