
電気自動車バッテリーの主要原料であるリチウムの価格が4年ぶりの最安値を記録している。トレーディングエコノミクスによると、上海証券取引所の先物市場で2022年11月に1トン当たり60万元(約1,238万4,343円)近くまで上昇した炭酸リチウムは、今月25日時点で7万4,100元(約152万9,466円)まで下落した。
リチウムはレアアースやコバルトなどと共に中国が8大重要鉱物に指定した原材料だ。電気自動車バッテリーの主要原料として「白い石油」とも呼ばれる。リチウムは中南米やオーストラリア、中国などでしか産出されない希少鉱物で、世界各国が確保するため競争を繰り広げている。
特に2021~2022年に世界の電気自動車メーカーの競争が激化し、リチウム価格が急騰したため、産出国での増産や新規鉱山開発が活発化した。三菱商事や住友商事もオーストラリアなどの現地鉱山開発企業と提携し、リチウムの供給網を次々と確保してきた。
天井知らずに上昇していたリチウム価格が下落し始めたのは2023年からだ。リチウム鉱山の増加で供給過剰となる一方、リチウム需要の中心市場である中国の電気自動車市場の成長が鈍化し始めたためだ。ブルームバーグは、中国の昨年の電気自動車販売台数が前年比35%増にとどまり、2023年の50%増と比べると成長が鈍化していると伝えた。
北米や欧州市場でも主要自動車メーカーが減産に入り、電気自動車販売の鈍化がリチウム価格を押し下げている。多国籍投資銀行のUBSも当面は価格下落要因があると予測している。UBSは最近の報告書で「リチウムの供給が昨年25%増加した後、今年も15%増える見込み」とし、「電気自動車市場の成長速度が予想を下回っており、供給過剰が2027年まで続く可能性が高い」と分析した。

原材料価格の下落で製造コストが低下すれば、収益性が改善するのは当然だ。現在のように安価な中国製電気自動車が大量に市場に出回っている状況ではなおさらだ。しかし、現在の世界の自動車市場はドナルド・トランプ米政権の一貫性を欠く関税政策により、不確実性が高い状況にある。
特に電気自動車のリーダー的存在であるテスラの場合、CEOのイーロン・マスク氏がトランプ大統領の側近としてワシントン入りしたことで、激しい不買運動に直面している。トランプ大統領の発言一つ一つに株価が乱高下している。
24日(現地時間)、自動車関税の課税を保留するという趣旨の発言がワシントンで出ると、テスラにすぐに買いが殺到し、前日比11.93%上昇の278.39ドル(約4万1,797円)で取引を終えた。かつてないほど不確実性が高まっている局面だ。
24日、アークインベストメントCEOで、「マネーツリー姉さん」として有名なキャシー・ウッド氏は、5年以内にテスラの株価が現在の10倍の2,600ドル(約39万468円)に達するとの予測を発表した。しかし、ウォール街はテスラが直面している業界の経済環境が当面厳しいと見ている。すでに中国の電気自動車メーカー比亜迪(BYD)に販売台数で追い抜かれた上、消費者の反感や関税リスクの影響で、今年の納車台数は前年比9%減少すると予想されている。
一方、リチウムや電気自動車に対する長期的な投資観点は維持すべきだというのが市場の見方だ。速度は遅くなっているものの、いずれ環境に優しい自動車への転換が進むとの見方からだ。フォーブス誌は今年、リチウム関連株の購入を推奨し、「リチウム株は下落しているが、死んでいるわけではない」と指摘した。
リチウム価格の急落で鉱山企業のM&Aが進んでおり、これらの企業が積極的に供給を絞っていることから、今後上昇の余地があると見ている。国際エネルギー機関(IEA)のクリーンエネルギー技術が今後20年間で世界のリチウム需要を約90%増加させるという背景も言及した。