
ドナルド・トランプ米大統領は就任以来、幾度となく北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との対話に意欲を示してきた。最近では、すでに水面下で接触が行われていると明かし、米朝対話が近い将来実現する兆しが見えている。
トランプ政権第一期では米朝対話の仲介役を韓国が担っていたが、今回は韓国が関与する余地がないのではないかという懸念が浮上している。朝鮮半島の南北関係が断絶し、役割を果たせない状況に加え、ロシアが北朝鮮と血盟関係を結び、有力な仲介者として台頭しているためだ。
トランプ「金正恩と連絡を取っている」..韓国排除はすでに現実化
トランプ大統領は先月31日(現地時間)、ホワイトハウスで金総書記に連絡する計画があるかとの質問に対し、「我々は連絡を取り合っている(we have, there is communication)」と述べ、「おそらくどこかの時点で何かを行うだろう」と明らかにした。
米朝間で水面下の接触がすでに行われているという意味に受け取れるが、韓国政府は外国首脳の発言について言及を控えている。これに対し、すでに米朝対話において韓国の「排除」が現実となったとの指摘が出ている。
韓国の北韓大学院大学の教授、梁茂進(ヤン・ムジン)氏は「非公式にホワイトハウスのリチャード・グレネル特使やアレックス・ウォン国家安全保障副補佐官などが在ニューヨーク北朝鮮代表部と電話やメールで接触した可能性は十分にある」とし、「対面接触の進展の兆しは見えないが、より積極的に対話を促す姿勢を示している」と述べた。
韓国の淑明女子大学特任教授、南成旭(ナム・ソンウク)氏は「トランプ大統領と金総書記がすでに書簡をやり取りしている可能性がある」とし、「このような米朝間のやり取りは米₋韓国間で共有されていないようで、対話が始まっても結果を通知する程度にとどまるだろう。トランプ大統領は過去の米韓対話の失敗経験から、韓国の関与を望んでいないようだ」と分析した。
血盟関係を再確認した北朝鮮とロシア。プーチンを尊重するトランプ..「韓国に不利な展開」
米朝対話において韓国が排除される場合、仲介役はロシアが担うとの見方が強い。現在、対北朝鮮への影響力が最も大きい国がロシアであるためだ。北朝鮮とロシアはウクライナ戦争を機に軍事協力を継続し、北朝鮮軍の派兵にまで至り、現在は血盟関係にまで発展したとの評価がなされている。
米国の仲介によりウクライナ戦争が終結しても、北朝鮮とロシアの関係は持続するとの予測が多い。終戦交渉中にもかかわらず、北朝鮮はロシア側を「同志」という格上げされた表現で呼び、追加派兵を行い、金総書記は来月9日のロシア戦勝記念日に訪露する予定である。
韓国統一研究院の先任研究委員、洪珉(ホン・ミン)氏は「ウクライナ戦争が終結すれば、北朝鮮とロシアは中長期的な軍事協力や経済協力を中心に関係の範囲を広げ、深さが浅くなる可能性はあるが、関係自体に大きな打撃を受ける可能性は低い」とし、「さらにトランプ大統領はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の地位を尊重する点で、先に米朝対話の仲介を要請する可能性も排除できない」と指摘した。続けて「北朝鮮側を支持する立場で仲介すれば、我々にとって不利な展開になる可能性がある」と懸念を示した。
韓国の公州大学国際学部教授、林恩廷(イム・ウンジョン)氏は「ウクライナ戦争がある程度収束すれば、プーチン大統領が米朝対話の仲介役を買って出ることも想定できる」とし、「過去の6者会談は中国が主導したが、現在は対北朝鮮への影響力が最も大きい国がロシアとなったため、そうした役割を担う可能性がある」と予測した。
さらに北朝鮮は最近、中国との関係改善も試みている。中露も関係を緊密化しており、ロシア戦勝記念日を機に北朝鮮・中国・ロシアの首脳が一堂に会する可能性も指摘されている。中国と北朝鮮の戦勝記念日を含む記念日も75周年や80周年など、権威主義国家が重視する5年単位の節目を迎えているため、今年は北朝鮮・中国・ロシアが結束する様々な機会が存在する。
学界では北朝鮮・中国・ロシアの3か国が結束するのは困難だと見られているが、北朝鮮・中国、北朝鮮・ロシア、中国・ロシアなどの二国間関係は強化されると予測されている。そのため、米朝対話が始まれば、北朝鮮・中国・ロシアがそれぞれの利害関係に応じて主導し、その過程で韓国は安全保障上のリスクを抱える可能性があるということだ。