
米Amazon(アマゾン)が衛星インターネットサービス「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」の最初の衛星を今月9日に打ち上げる。イーロン・マスク氏率いるスペースXの「スターリンク」と宇宙分野で本格的な競争を繰り広げる見通しだ。
2日(現地時間)、アマゾンは9日の正午に米フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の「アトラスVロケット」を使用して、カイパー衛星27機を打ち上げると発表した。プロジェクト・カイパー開始から6年ぶりの成果だ。
アマゾンは2019年、今後10年以内に最大3,236機の衛星を打ち上げ、衛星インターネットサービスを展開する計画を発表した。アマゾンはカイパーの構築に100億ドル(約1兆4,600億円)以上を投資し、フロリダ州に1億2000万ドル(約175億4,700万円)を投じて打ち上げ準備施設を着工した。
プロジェクト・カイパーのテクノロジー担当副社長を務めるラジーヴ・バディアル氏は、「今回の打ち上げは単なるテストではなく、常用化される衛星設計を実際に宇宙に送り、一度に多数の衛星を配置する初の試み」とし、「プロジェクト・カイパーの幕開けを告げる重要な節目」と強調した。個人、企業、政府機関へのサービス提供を計画しているが、具体的な性能や開始時期は明らかにしていない。
アマゾンは、スターリンクが支配する低軌道(地上から2,000km以内の宇宙領域)衛星インターネット市場に正式に参入した。既に約550kmの高度に7,000機以上の衛星を打ち上げたスターリンクは、低軌道でインターネットサービスを提供する全衛星の60%を占め、世界100か国以上で450万人にサービスを提供している。ソフトバンクが支援するワンウェブや中国のスペースセイルも競合として名を連ねる。
アマゾンはスターリンクよりも高い約600kmの高度に3,236機の衛星を打ち上げる計画だ。来年7月までに全衛星群の半数にあたる1,618機の打ち上げを目指す。フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「低軌道衛星インターネットサービス市場で、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏とイーロン・マスクCEOが対決する」とし、「スターリンクの競合出現は、マスクCEOの市場支配的地位を懸念する多くの政府に歓迎されるだろう」と分析した。ロイター通信は、「アマゾンは出遅れたものの、強力なウェブサービス事業と消費者製品の経験があるため、カイパーの顧客獲得と衛星通信端末の大量生産においては、スペースXより優位に立っている」と伝えた。
しかし、一部の専門家はプロジェクト・カイパーが全世界でサービスを提供するまでには、かなりの時間を要すると指摘している。アマゾンが2023年10月に2機のプロトタイプを打ち上げてから、最初の本格的な衛星打ち上げまでに長期間を要したためだ。アマゾンはプロトタイプ衛星の打ち上げと初期テスト完了後、昨年に最初の衛星を打ち上げる予定だったが、ULAが米宇宙軍の任務を優先したため、スケジュールに遅れが生じた。
米国連邦通信委員会(FCC)が来年7月30日までに、少なくとも50%の衛星を軌道に投入するよう定めた要件も、アマゾンにとって課題となる可能性がある。残りは2029年7月30日までに軌道に投入すればよい。
衛星コンサルティング会社サミット・リッジ・グループのアルマン・ミュージー代表は、「カイパー衛星27機の製造に12〜15か月かかるとすれば、3,236機の製造と打ち上げにはどれほどの時間を要するだろうか」と述べ、「経験を積めばスピードアップは可能だが、月産2機から日産2機へと飛躍的な生産性向上が必要になる」と指摘した。そのうえで、「アマゾンがFCCに(軌道投入期限の)延長を申請する可能性が高い」と付け加えた。