
ウォール・ストリート・ジャーナルは最近の報道で、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による12・3非常戒厳令の発令と、その後の弾劾の局面で開かれた国会国防委員会の質疑や国政調査などを通じて韓国の軍事機密が漏洩し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「情報の棚ぼた(windfall)」を得たと伝えた。海外メディアも、国防委員会の生中継において野党議員や戒厳軍幹部らによって軍事機密が漏洩した点に懸念を示しており、韓国軍内外では「今回の情報流出により、北朝鮮が実質的な利益を得た可能性が高い」との見方が広がっている。
同紙は、5日(現地時間)の報道で「韓国国会が12・3非常戒厳令の発令に関しての追及を(国防委員会などで)生中継する中、金正恩委員長は平壌にいながらも『前例のない情報』を入手し、大きな成果を上げた」と伝えた。国会は、尹前大統領の弾劾訴追案が可決された昨年12月中旬以降、国会国防委員会での質疑や「内乱容疑の真相解明を目的とした国政調査特別委員会(内乱国調特委)」を相次いで開催した。その過程で深刻な軍事機密が漏洩したことを、ウォール・ストリート・ジャーナルは問題視している。
共に民主党など野党議員らが招集され、生中継された国会の聴聞会で、出席した戒厳軍幹部の陸軍高官が、尹前大統領による戒厳令発令後、軍の機密施設である合同参謀本部の指揮統制室「決心支援室」に赴いたという事実に触れ、その正確な位置まで明かしたことが物議を醸している。ウォール・ストリート・ジャーナルは「ある将官は、指揮統制室の『決心支援室』が何階にあるかまで明かされたことについて『常識を逸した行為だ』と懸念を示した」と報じた。これに対し、国防部のキム・ソンホ次官(国防部長官職務代行)が「ここは核心的な軍事施設だ。これ以上の議論は控えるべきだ」として、議論を遮る場面もあったと同紙は伝えている。
さらに同紙は、ある野党議員が、戒厳令が発令された日の夜に中央選挙管理委員会を訪れた情報将校の写真や、韓国軍の保有する韓国産偵察ドローン(S-Bat)の保有数を公表したことに対し、ある指揮官が「長年かけて育ててきた重要な資産が、あまりにも容易に明かされてしまった」と嘆いたことについても報じた。
また、韓国の精鋭特殊部隊が、昨年12月3日に尹前大統領の戒厳令発令を受けて出動していたことについては「韓国軍の対侵略対応策が北朝鮮に知られる結果となった」との指摘も出ている。ウォール・ストリート・ジャーナルは、梨花女子大学・北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授の言葉を引用し「長い間かけて収集し、相互確認の必要な情報が、あまりにも容易に北朝鮮に渡ってしまった」との懸念を表した。
アメリカのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」で地政学・外交政策部門の代表を務め、韓国部門の特別研究員でもあるビクター・チャ氏は「トランプ大統領が、韓国に深刻な影響を及ぼす恐れのある政策を次々に押し進めており、米国防総省がインド太平洋地域における米軍のローテーション配備を見直す中、その影響が在韓米軍にも及ぶ可能性がある」と懸念を示した。さらに「米韓同盟は現在『静かな危機(Quiet Crisis)』の状況にあり、6月初旬の大統領選挙を経た時点で、両国の同盟関係が破った損傷が、もはや取り返しのつかない段階に達している恐れもある」と語った。