
米国と日本の関税協議において、円・ドル為替レートが主要な交渉カードとして浮上していると、9日付の日本経済新聞が報じた。
同紙によると、スコット・ベセント米財務長官は現地時間7日、自身のX(旧Twitter)アカウントに「日本政府との協議を開始するよう指示を受けた」と投稿した。
ベセント長官は「日本は依然として重要な同盟国であり、関税、非関税障壁、通貨問題、政府補助金などについて生産的な議論を期待している」と述べ、為替問題も交渉の主要議題になる可能性を示唆した。
日本政府は8日、日米関税協議の担当として赤沢亮正・経済再生担当相を任命した。為替問題は加藤勝信財務相が担当する。
米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表も協議に参加するが、為替に関する議論は日米の財務担当閣僚間で行われる見通しだ。
日本財務省関係者は日経に対し、「ベセント長官が自動車問題を所管しないように、通商は通商、為替は為替として議論される」と説明した。
トランプ大統領はこれまで、円安が米国製造業の輸出競争力を損ねていると批判してきた。
一方、日本政府は円安調整が輸入物価の上昇を抑制する効果をもたらすと判断しており、米国と一定の協調を図る可能性もある。
ただし、両国が協調して為替市場に介入したとしても、その効果は不透明だ。特にドル安誘導は主要7か国(G7)の「為替の恣意的調整禁止原則」との矛盾が生じる恐れもある。
為替が調整されれば、日本銀行(BOJ)の金融政策にも好影響をもたらす可能性がある。日銀は、円安による物価上昇圧力を抑えるために金融政策の正常化を進めてきた。
日銀内部では、円安の調整によりインフレの進行が和らげば、利上げ判断までにより多くの時間を確保できるとの期待もある。
さらに、輸入物価の上昇が抑えられれば企業のコスト負担や国民の生活費負担が軽減され、実質賃金の増加を通じて消費マインドが改善する可能性もある。これは日銀が目指す「賃金と物価の好循環」とも一致する。
日本財務省関係者は日経に対し、「過度な円高は企業経営の予見可能性を低下させ、日本の輸出企業の収益性も損なう」と指摘し、「米国による関税引き上げと相まって、日本経済に「ダブルパンチ」となる恐れがある」と懸念を示した。