
米中の関税戦争が譲歩なき「強対強の対決」というチキンゲームの様相を呈している。中国はトランプ米大統領の度重なる圧力にもかかわらず、次々と対抗措置を打ち出し、強硬姿勢を崩していない。
中国が他国と異なり、米国の関税攻勢に対して融和的ではなく対決姿勢を示し、強硬な態度を維持している理由として4〜5点挙げられる。
何より中国の習近平国家主席は自国の政治的理由から、決して米国に頭を下げる姿を見せられない状況にある。中国のような権威主義国家で最高指導者が米国に屈服する姿を見せれば、統治力に打撃を与え、失脚にもつながりかねないからだ。
■デカップリングを追求する米国に譲歩しても実益なしと判断
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)も9日、「米中関税戦争で習主席には弱腰に見える選択肢がない」と指摘したのも、このような文脈からだ。NYTは「習主席が自らを中国の偉大な復興を導く救世主として描いてきた状況で、トランプ大統領に譲歩すれば正当性が損なわれるしかない」と分析した。
第二に、中国指導部は米国が中国の台頭阻止を決意した状況下で譲歩しても得るものはなく、一時的効果に過ぎないと見ている。グローバルサプライチェーンから中国を切り離すデカップリングを追求する状況で、米国との対立や対決は避けられないと考えている。
膨大な両国の貿易不均衡を改善する妙案がないことも理由の一つだ。米国の昨年の対中輸入は4,400億ドル(約64兆6,630億円)だが、中国の対米輸入は1,440億ドル(約21兆1,640億円)にとどまった。
来年末に予定された米国中間選挙が関税戦争の分水嶺になるとみられていることも、強硬対応の主要因の一つだ。それまで中国は「持久戦」を展開する方針だ。関税がインフレと景気後退を引き起こせば、中間選挙での共和党の敗北は確実で、トランプ大統領の政権運営力も低下すると見込み、それまで国内外で体面を保ちながら耐え抜く構えだ。
■中間選挙まで持久戦を展開し強硬対応を維持
中国はトランプ政権1期目の経験から耐性と学習効果が生まれ、十分な対策も講じていることが、強硬対応の背景となっている。
8日の中国の報復関税発表に対し、米国が再び50%の追加関税賦課を示唆すると、中国はすぐに6つの報復リストを公開し、「問題は起こさないが、恐れてもいない」と対抗姿勢を明確にした。中国国営新華社のWeChatアカウント「牛彈琴」で公開された「6大対応措置」には、米国産大豆・ソルガムなどの農産物関税の大幅引き上げ、家禽肉の輸入禁止、中国国内の米国企業を対象とした知的財産権調査、米国映画の輸入縮小・禁止などが含まれている。
■貿易市場の多様化と半導体など技術突破による自立経済構造実現にも自信
米国との全面対決は中国にも被害と苦痛を伴うことは避けられない。しかし、中国側は米国の物価上昇と株価暴落によりトランプ大統領が結局譲歩せざるを得なくなると楽観視している。中国人民大学重陽金融研究院の院長、王文氏は「誰がより長く耐えられるかの問題なら、中国が負けることはない」と述べた。政策の継続性を持つ中国が、選挙で数年ごとに政権が交代する米国より持久戦で優位に立っているという自信の表れだ。王氏は「米国は中国が米国を必要とする以上に中国を必要としている」とし、「他国が中国から商品を買って米国に再販する形で対応するだろう」と指摘した。
共産党機関紙の人民日報などが最近、中国国民に関税に打ち勝つ自信を持つよう呼びかけているのも、このような状況認識に基づいている。中国メディアは、アフリカ・南米などグローバルサウスへの貿易市場拡大や、AI・半導体などの技術突破による自立経済構造への移行を強調している。