
トランプ政権が発動した相互関税の影響で売りが続いていた米国債市場が、関税の一部猶予発表を受けて9日(現地時間)午後から落ち着きを取り戻す様子を見せた。
8日には一時年利3.886%まで下落していた米10年債利回りは、9日の相互関税発効直後には一気に年利4.516%まで急騰した。しかし、トランプ大統領が中国を除く各国に対して相互関税を90日間は10%のみを適用すると発表すると、年利4.263%まで低下し、市場は安定を取り戻した。
このような国債利回りの急上昇は、債券市場で投資家による投げ売り(パニック売り)が発生した結果だ。通常、株式市場が急落すると安全資産である米国債に資金が流入し、国債価格が上昇し、利回りは低下するのが一般的だが、今回は逆の現象が起きた。
この異例の動きに対し、債券市場では米国債の最大保有国である中国と日本のいずれかが大量売却に動いたのではないかとの見方が浮上している。
米フォックス・ニュースの記者チャールズ・ガスパリーノ氏は自身のSNSで「資産運用会社によれば、昨夜の米国債の大量売却を主導したのは中国ではなく日本だったという」とし、「この売りが債券市場を揺るがし、トランプ氏に政策の一時停止を迫る圧力となった」と伝えた。
米中間の貿易摩擦が激化する中で、中国が米国を牽制するために国債を売却したとの観測も出ていたが、実際には日本が主な売り手だったとの分析だ。
一方、東京の明治安田生命の投資戦略責任者である北村健一郎氏はブルームバーグに、「中国が報復措置として米国債を売却している可能性もある」と述べ、見方が分かれている。
中国や日本が米国債を売却することは、米政府の財政赤字から国民の住宅ローン金利に至るまで、広範な分野に影響を及ぼす「金融兵器」として捉えられている。米国債の利回りが上昇すれば、それに連動して各種金融商品の金利も上昇し、政府だけでなく個人や企業の利子負担も増加するためだ。
ただし、これらの国が保有する米国債を大量に売却すれば、代替となる安全な投資先が不足しているうえ、保有中の残りの国債価格も大きく下落するリスクがある。
一部の投資家が経済の不確実性の高まりを受けて国債を売却し、現金保有比率を引き上げているとの見方も出ている。ブルームバーグによると、米国のマネーマーケットファンド(MMF)への資金流入額は4月2日時点で7兆3032億ドル(約1042兆5366億円)と過去最高を記録した。