
米中の関税戦争が激化する中、中国の習近平国家主席は対米連合戦線構築のため同盟国確保に注力している。外交・経済分野で対立してきた欧州連合(EU)との対話を再開し、東南アジア歴訪を決定するなど、外交攻勢を展開している。
中国外交部によると、習主席は14日から18日までベトナム、マレーシア、カンボジアを国賓訪問する。14日から2日間、ベトナムでトー・ラム共産党書記長と会談。15日から18日には、今年のASEAN(東南アジア諸国連合)議長国のマレーシアとカンボジアを訪れ、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相、カンボジアのフン・セン首相と会談する予定だ。今回の訪問は習主席の今年初の外遊となる。ドナルド・トランプ米大統領の関税攻勢が激化する中、中国が友好国との結束強化を図っていると外交筋は分析している。
特に東南アジア3か国は近年、一帯一路構想を通じて中国との協力を深めている。中国のサプライチェーン多様化の恩恵を受けた国々とされる。ベトナムはASEAN内で中国の最大貿易相手国。カンボジアは親中国家の代表格で、マレーシアは現在中立的立場を維持している。習主席は8日から9日まで北京で開催された中央周辺工作会議で、周辺国との運命共同体構築を強調した。
同様の文脈で、冷え込んでいたEUとの関係にも変化の兆しが見られる。ロイターは、EUが中国製電気自動車に課している高率関税の撤廃交渉再開で中国と和解したと報じた。EUは昨年10月から中国製電気自動車の関税率を10%から17.8~45.3%に引き上げていた。中国政府の補助金を受けた安価な中国製電気自動車が欧州市場を混乱させるとの理由からだ。しかし、トランプ大統領が連日関税攻撃を仕掛ける中、むしろ中国批判のトーンを和らげている。
トランプ大統領は関税戦争の矛先を中国に絞っている。トランプ政権2期目の発足後、対中累積関税率は145%に達している。中国は84%の対米関税賦課を皮切りに、米国渡航自粛令や米国映画の輸入削減など、様々な非関税措置で対抗している。中国は米国の孤立化戦略に対抗し、既存の友好国のみならず、米国との同盟関係が揺らいでいる国々を中心に結束を強化している。
ただし、過去に中国と対立した国々は、米国に強い不満を示しつつも中国側の協力要請を拒否しているという。AP通信は「インド、オーストラリアのように中国と対立した経験のある国々は、中国の接近を拒んでいる」と分析している。