ドナルド・トランプ米大統領一家が支援する暗号資産(仮想通貨)プロジェクト「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial、WLFI)」が、多額の投資損失を抱えながらも、新たにアルトコインの購入に踏み切った。
今回は時価77万5,000ドル(約1億1,008万円)相当のセイ(SEI)トークン489万枚を取得した。

ブロックチェーン分析企業「アーカム・インテリジェンス(Arkham Intelligence)」によると、この取引は先月12日(米国時間)、WLFIの取引用ウォレットの一つを通じて行われた。使用された資金は、プロジェクトのメインウォレットから送金されたUSDCだったと説明している。
当該ウォレットは、過去にもWLFIが様々なアルトコインを購入する際に使用した実績があると指摘した。
WLFIはこれまで、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった主要暗号資産に加え、トロン(TRX)、オンド・ファイナンス(ONDO)、アバランチェ(AVAX)、そして今回追加されたセイまで多数のアルトコインをポートフォリオに組み入れている。しかし、投資成果は期待を下回っているのが実情だ。
ブロックチェーン分析企業「ルックオンチェーン(Lookonchain)」の集計によると、WLFIは計11種類の暗号資産に対して、約3億4,680万ドル(約497億700万円)を投じたが、先月12日時点で単一銘柄でも利益を計上できていない状況だ。特にイーサリアム投資では、約1億1,400万ドル(約163億3,967万円)の損失を記録しており、ポートフォリオ全体では約1億4,580万ドル(約208億9,758万円)の評価損が発生していると示している。

「コインテレグラフ」の報道によると、WLFIはこうした損失にもかかわらず、積極的な暗号資産購入を続けている。
わずか2か月前の2月3日、トランプ氏の息子であるエリック・トランプ氏は、自身のX(旧Twitter)アカウントで「今がイーサリアムを買うには絶好のタイミングだ」とフォロワーに購入を促す投稿を行っていた。その投稿には「後で感謝することになるだろう」との一文も含まれていたが、その後削除された。
14日(日本時間)午後3時時点でのイーサリアムの価格は、2月3日の終値2,879ドル(約41万2,648円)から43.8%下落し、1,618ドル(約23万1,908円)台で取引されている。
一方、WLFIのステーブルコイン「USD1」のロゴが、最近コインベース(Coinbase)、バイナンス(Binance)、コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)など主要プラットフォームに登場した。公式発表は行われていないものの、市場ではこれを「USD1の非公式ロゴ公開」とみなす声が広がっている。
この動向に対し、米政界でも懸念の声が上がっている。
先月2日(現地時間)に開催された米下院金融サービス委員会の公聴会では、民主党のマキシン・ウォーターズ(Maxine Waters)議員が、「トランプ大統領がUSD1を通じて、最終的に米ドルに代わる通貨を目指している可能性がある」との見方を示した。
これに対し、共和党所属のフレンチ・ヒル委員長も、大統領がステーブルコイン事業を保有することに対する規制がなければ、関連法案に同意できないと反発した。
専門家は今回のWLFIの継続的な投資姿勢について、「暗号資産市場の価格変動性と政界の利害関係が複雑に絡み合う現状を象徴している」と指摘したうえで、「今後の規制議論において、重要な争点となる可能性がある」と語っている。