
ドナルド・トランプ米政権の関税攻勢で始まった米中間の関税戦争が、鉱物・外交戦へと拡大している。米国は、相互関税猶予期間中に同盟国・友好国との優先交渉に乗り出す一方、中国への圧力も引き続き強めている。東南アジア歴訪中の習近平中国国家主席は、ベトナムで序列1~4位の全員と会談した後、15日にマレーシアへ移動するなど、対米戦線の拡大を図っている。
トランプ大統領は14日(現地時間)、ホワイトハウス執務室にてエルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領と会談した後、記者団に対し、中国とベトナムの経済協力強化について「中国やベトナムを非難するつもりはない」とした上で、「会談は『どうすれば米国を出し抜けるか』を探るためのものだろう」と述べた。ホワイトハウス国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長は同日、中国のレアアース輸出規制について「現在、全ての選択肢を検討中だ」とし、追加対応の可能性を示唆した。スティーブン・ムニューシン財務長官は、ブルームバーグTVのインタビューにて、中国製品に対する関税率(145%)について「これは大きな数字だ」とし、「中国とはいずれ大きな取引が成立するだろう」と語った。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ムニューシン長官は日本、英国、オーストラリア、インド、韓国の5カ国との交渉を最優先課題として各国と接触を進めてきたという。
14日から東南アジア3カ国を歴訪中の習主席は、ベトナム共産党書記長のグエン・フー・チョン氏らと会談し、米国の覇権主義への抵抗を呼びかけた。新華社通信によると、習主席はチョン書記長との会談で「小さな船は荒波に耐えられず、同じ船に乗ってこそ安定して遠くへ行ける」とし、「一方的な排除行為に共同で反対すべきだ」と述べた。また、15日午後にマレーシアを訪問する習主席は、同日マレーシアの新聞「ザ・スター」への寄稿で「中国はマレーシアを含むASEAN(東南アジア諸国連合)諸国と共に、地政学的で陣営に基づく対立、一方主義と保護主義に立ち向かう」と米国を牽制した。さらに「我々は多国間貿易体制、グローバルな産業・供給網、国際的な開放・協力環境を維持しなければならない」と強調した。