
賄賂資金の出所を偽装した罪などで懲役15年の実刑判決を受けたペルー元大統領夫人が、判決直後にブラジルへ亡命し、現地で「逃亡的亡命」と強い非難を浴びている。
16日(現地時間)、ブラジルメディアの「G1」やペルーの「エル・コメルシオ」などによると、オヤンタ・ウマラ元大統領(62)の妻ナディン・エレディア被告(48)はブラジル空軍機でブラジリアに到着し、亡命生活を開始したという。
エレディア被告は未成年の子どもとともにブラジル当局から亡命者の地位を得た。前日、ペルー第3刑事裁判所はマネーロンダリング(資金洗浄)などの容疑で起訴されたウマラ元大統領夫妻に、それぞれ懲役15年の実刑を言い渡していた。
2011年から2016年まで政権を担ったウマラ元大統領は、就任前にブラジルの大手建設会社オデブレヒトから300万ドル(約4億2,800万円)を受け取り、妻とともにその取得経緯を偽装したとペルー検察は指摘している。
ウマラ元大統領夫妻には、これとは別に南米の左派の象徴だった当時のベネズエラのウゴ・チャベス大統領側から20万ドル(約2,851万円)相当を受け取ったという容疑もかけられている。
ペルー検察はこの点も起訴内容に含め、裁判所もこれを有罪と判断した。また、元大統領の義母や義弟も関連事件に巻き込まれ、実刑判決を受けたとエル・コメルシオは伝えている。
しかし、エレディア被告側の弁護人は、明確な証拠なしに検察の起訴と裁判所の有罪判断が行われたと反論している。オデブレヒトが「金を渡した」と主張しているだけで、それを裏付ける具体的な証拠を検察が示していないとの主張だ。
過去のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領のマネーロンダリング容疑事件と酷似しているとエレディア被告側は説明していると、G1は伝えている。これを受け、ペルー国内では、エレディア被告が当局の庇護を受けて逃亡したとの見方が広がり、波紋を呼んでいる。
2023年1月に3期目の政権を発足させたルーラ大統領は、2003年から2010年までの1・2期目の政権を率いた後、在任中の汚職およびマネーロンダリング容疑で2018年頃から捜査対象となり実刑判決を受けたが、のちに無実が証明されている。
これに関連し、ペルー外務省は声明で「在ペルー・ブラジル大使館が外交難民としてエレディアとその子どもの出国を要請した」とし、「我々はエレディア被告への実刑判決の事実を伝えたが、難民の地位に関する条約に基づきブラジル側の要請を受け入れた」と釈明した。
ウマラ元大統領は前日、警察に逮捕されバルバディヨ刑務所に収監された。同刑務所にはオデブレヒト汚職事件で実刑判決を受けたアレハンドロ・トレド元大統領(79)や、職権乱用などの容疑で捜査を受けているペドロ・カスティジョ元大統領(55)など、2人の元大統領も収監されている。