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2025年04月21日月曜日
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「債務の罠外交」と「スマートポート」…中国が事実上の海上貿易を支配

引用:Shutterstock*この画像は記事の内容と一切関係ありません

中国、事実上の海上貿易を支配

ペルー・チャンカイ港株60%を取得

釜山コンテナターミナルで第2大株主に

物流網拡充でリスク分散と収益確保狙う

最近激化する米中貿易戦争で、中国は米国に対し一歩も引かない強硬姿勢を示している。米国産輸入品への関税を最大125%に引き上げた今回の対応には、貿易戦争初期とは異なる一種の自信がうかがえる。その背景には、輸出市場の多様化によって対米輸出の比率が15%程度にとどまっていることや、先端技術の自立化が進んでいることがある。加えて重要なのが、世界の海上貿易を中国が事実上掌握しているという現実だ。ドナルド・トランプ大統領が就任直後にパナマ運河の運営権を問題視したのも、この状況を踏まえたものといえる。

◇中国が港湾プロジェクト計129件…

南極除く全大陸に影響力

中国による海外港湾投資が、南極を除く全大陸に広がっている。米国のシンクタンク「外交問題評議会(CFR)」によると、2023年8月時点で中国が関与する港湾プロジェクトは129件に上り、このうち17件は中国が所有または運営の主導権を握っている。さらに14件については、軍事目的での利用の可能性があると分析している。

投資先は欧州、アフリカ、中東、アジア、さらには米国にも及び、中国が世界規模で影響力を強めている実態が浮き彫りとなっている。2023年末に開港したペルーのチャンカイ港も、その一例だ。開港式には習近平国家主席がオンラインで出席し、中国政府の強い関心をうかがわせた。

同港は、中国の港湾運営大手「コスコ・シッピング」が株式の60%を保有し、運営も担っている。総事業費は36億ドル(約5,067億9,056万円)にのぼり、中南米における中国の経済的影響力拡大を象徴する事業と位置づけられる。

パナマ運河、スエズ運河、ペルシャ湾といった地政学的に要衝となる地域にも、中国資本が関与する港湾が存在する。韓国も例外ではなく、2015年には中国山東省の物流企業「中海港口」がCJ大韓通運の釜山コンテナターミナル(KBCT)の株式20%を取得し、第2位の株主となった。

◇海上輸送は国際貿易の要…地政学的拠点としての重要性

世界各地の重要な海路には、中国が運営する港湾が点在しており、これにより中国は港湾運営収益を得るだけでなく、グローバル貿易の流れで優位性を確保している。自ら運営する港を利用することで、輸送費削減や物流遅延リスク低減を実現し、競争力を高めることができる。また、資源輸入の安定化とグローバルサプライチェーンにおける影響力拡大にもつながる。戦略国際問題研究所(CSIS)の2023年の報告書によると、世界のコンテナ取引の27%以上が、中国や香港に本社を持つ企業が株式を保有する港を通じて行われた。

港は単なる物流拠点にとどまらず、地政学的拠点としても重要な役割を果たす。中国は「マラッカ・ジレンマ(Malacca Dilemma)」を経験し、複数の地域に拠点を設ける必要性を認識してきた。マラッカ・ジレンマとは、2003年に胡錦濤(コキントウ)前国家主席が言及したもので、マラッカ海峡を通過しなければエネルギー輸送ができない状況を指す。この海峡はインド洋と南シナ海を結ぶ重要な水路で、中国の原油輸入量の80%が通っている。

中国は、米国によるマラッカ海峡封鎖のリスクを懸念し、パキスタンのグワダル港開発を進め、「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」を通じて、マラッカ・ジレンマの克服を目指している。

◇「安全保障脅威が深刻」と懸念…「債務の罠外交」問題

中国が世界の港湾インフラの多くを支配し、影響力を行使している現状に対し、米国は経済的な脅威のみならず、安全保障上の脅威として警戒している。最近、ピート・ヘグセス米国防長官がパナマを訪れ、パナマ運河周辺での軍事訓練強化を発表したことは、中国への強い牽制と解釈されている。特に米国が懸念しているのは、港湾インフラがスパイ活動や情報収集に利用されるリスクだ。カーネギー国際平和財団の中国海洋戦略専門家、アイザック・カードン氏は、「中国企業による米国内港湾投資で最も懸念されるリスクは、海上インフラや輸送システムに導入された中国製機器やソフトウェアから発生する。中国企業は「スマートポート」技術を導入し、情報収集を容易にし、米国の港湾運営を妨害する恐れがある」と指摘した。

昨年、米国では市場シェア80%を占める中国製港湾クレーンが、中国のスパイ活動に利用される可能性が懸念された。これを受け、ジョー・バイデン前政権は中国製クレーンをサイバー攻撃から保護するための対策を発表した。しかし、中国政府は「中国が港湾クレーンのデータを遠隔操作するという主張は完全に誤りだ」と強く反論した。

また、中国の海外港湾投資が発展途上国に過度な【負債】をもたらしているとの指摘もある。中国はこれらの国々に巨額のインフラ資金を貸し付け、返済不能時には港湾施設の株式や運営権を確保する「債務の罠外交」を展開している。スリランカのハンバントタ港がその代表例で、建設費用11億ドル(約1,548億5,267万円)を中国が貸し付けたが、スリランカは返済できず、2017年に99年間の運営権を中国に譲渡した。これにより中国は戦略的要衝を確保した一方、スリランカは外貨危機に直面した。

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