
「中国製品が韓国産に偽装」…増加する迂回輸出に当局が取り締まり強化
中国人が韓国に設立したA社は、今年1月に中国製の二次電池用正極材を米国に輸出しようとした際、税関当局に摘発された。A社は25%に上る高率関税を回避するため、中国から輸入した正極材を国産品と偽って包装を変更したり、韓国製の正極材と混ぜた上で原産地を韓国製と表示していた。
近年急増するこのような韓国製偽装の迂回輸出(積み替え・トランシップ)により、韓国の通商当局の負担が増している。特に対米迂回輸出の摘発規模は、今年に入ってわずか3か月で昨年の年間記録を上回った。ドナルド・トランプ米大統領が迂回輸出を不正行為として名指しで非難したことから、これを阻止するための対策が急務となっている。
21日の韓国関税庁の発表によると、今年1〜3月の対米迂回輸出は3件で、摘発金額は285億ウォン(約28億円)に上った。昨年は計4件の迂回輸出が摘発され、摘発金額は217億ウォン(約21億円)だった。金額ベースでわずか3か月で昨年の年間記録を超える迂回輸出が摘発されたことになる。
関税庁の関係者は「最近の米国政府の通商政策の変化に伴い、相互関税や輸入規制を回避するため、規制対象となる製品を韓国経由で迂回輸出する行為が大幅に増加している」と説明した。
特に中国製品が韓国を「原産地ロンダリング」の場として利用するケースが増えている。先月、税関当局は中国製の防犯カメラ(CCTV)などを韓国製と偽って米国に輸出したB社を摘発し、検察に送致した。B社は防犯カメラを部品の状態で輸入し、韓国で組み立てた後、韓国製と偽って輸出していた。米国が中国製の通信・映像セキュリティ機器に課している輸入規制を回避するためだった。
西江(ソガン)大学国際大学院の教授、許允(ホ・ユン)氏は「米中の関税戦争が現実化すれば、中国の迂回輸出はさらに深刻化する可能性が高い」と指摘し、「保護主義に傾く世界の通商秩序の流れを冷静に認識し、我々も対応能力を高めていく必要がある」と助言した。
税関当局も今後、迂回輸出の試みが頻発する可能性を踏まえ、全方位的な取り締まりに乗り出した。関税庁は貿易安全特別調査団を発足させ、米国の国別関税率の差を悪用した迂回輸出を阻止する方針だ。重点取り締まりの対象は、米国のアンチ・ダンピング関税、相互関税などの高関税が課される品目と輸入規制対象品目である。関税庁は国家情報院はもとより、米国土安全保障省(DHS)、税関・国境警備局(CBP)など韓国内外の情報機関との捜査協力や情報共有も拡大していく予定だ。
関税庁のコ・グァンヒョ庁長は「外国製品の原産地偽装による迂回輸出の増加は、米国など輸入国での正規の韓国製品の信頼性を低下させ、さらには輸入国の輸入規制や税関検査強化といった非関税障壁の拡大を招く恐れがある」と述べ、「原産地偽装、迂回輸出、技術流出の試みに対する集中取り締まりだけでなく、事前リスク点検、重要戦略品目に関する情報提供と企業支援など、韓国企業が困難に直面しないよう積極的に対応していく」と語った。
今月に入り、米国の関税賦課の影響が輸出実績に表れ始めたことも韓国の通商当局を圧迫している。この日の関税庁の発表によると、4月1〜20日の韓国の対米輸出額は61億8,000万ドル(約8,675億円)で、前年同期比14.3%減少した。対中輸出額も66億2,200万ドル(約9,296億円)で、同期間比3.4%減少した。特に今月3日から25%の関税が課された乗用車は前年同期比で輸出額が6.5%減少し、先月米国の関税賦課が始まった鉄鋼も輸出額が8.7%減少した。
対米輸入額がなかなか増加しない点も懸念材料だ。韓国政府は対米通商協議を前に、貿易収支の均衡を図るため対米輸出の縮小よりも対米輸入の拡大に重点を置いている。4月1〜20日の韓国の対米輸入額は40億800万ドル(約5,626億円)で、前年同期比10.1%減少した。今年第1四半期の対米輸入額も前年同期比4.3%減少している。