コミュニケーションアプリ「LINE」の運営会社であるLINEヤフー株式会社の韓国IT大手「NAVER」離れが加速している。18日の定時株主総会で、システムの構築などさまざまな面で依存していたNAVERへの委託関係を終了させることをあらためて表明した。
■NAVERとのシステム分離作業は早急に
LINEヤフーの出澤剛CEOは、この日本社で開かれた定時株主総会で、セキュリティ対策強化に関連する質問を受け、「NAVERクラウドに委託したLINEヤフーの社用システム、認証基盤との分離作業は今年中に終える方向で進めている」と発表した。また、「2026年中に予定されていたNAVERクラウドとLINEヤフーのグループ会社間の共通システムの分離も前倒しする予定だ」と付け加えた。
昨年11月にNAVER傘下企業がサイバー攻撃を受けたことで、「LINE」アプリ利用者の個人情報なども大量に漏洩した。総務省はこれに関連し、LINEヤフーに対して3月と4月に異例となる2度の行政指導を行った。3月に行った行政指導において、再発防止策の実施などに関する初回の報告を4月26日までに提出するよう求め、LINEヤフーは4月1日、再発防止策を提出したが、内容が不十分だとして2度目の行政指導を行い、再報告を要求していた。
出澤CEOはNAVERとの「資本関係の見直し」に関する具体的な回答は避けた。NAVERはLINEヤフーの親会社「Aホールディングス」の株式をソフトバンクとともに50%ずつ保有する大株主だ。総務省は2度の行政指導を通じて、NAVERとの関係が資本的な支配を受ける関係のため、委託する業務の管理監督が不十分であったと指摘し、資本関係の見直しなどについても言及していた。しかし、出澤CEOは「親会社同士の話であるため、資本関係について決定できる立場にはない」と回答を避け、「資本関係の見直しを含めた動きがある場合には迅速に公表する」と述べた。
また、今後のNAVERとの関係について、「業務委託方式について再検討を行っている」とし、「今後のサービス開発および運営の委託等に関しては終了または縮小する方針である」と明らかにした。
韓国の業界関係者からは「LINEヤフーからすると、総務省の行政指導があったため、早急にシステム分離等の対応を行いたいだろうが、NAVERとしては当然LINEヤフーの海外事業に対する主導権を持ちたいと考えている。また、NAVERなしにソフトバンクの技術力だけではサービスを運営するのは難しく、関係を完全に断ち切るということはできないだろう」という意見があがっている
■ソフトバンクの株主総会にも注目が集まる
また、同日の株主総会で、LINEの生みの親と呼ばれるシン・ジュンホCPO(最高製品責任者)が取締役から外れたことも大きなニュースとなった。
LINEヤフーは、取締役を7人から6人にする再編案を株主総会に提出し、承認された。シン氏はLINEヤフー取締役会の唯一の韓国人メンバーであり、事実上NAVERを代表する立場にあったが、これにより取締役会のメンバーはすべて日本人となり、「NAVER離れ」が現実化したとの評価も出ている。
そのため、日韓の業界関係者の間では、ソフトバンクが20日に開く株主総会にも多くの注目が集まっている。
総務省の行政指導に則り7月1日に提出される対策報告書には株式売却など資本関係見直しに関する内容は含まれていないとみられるが、以降、株式売却の可能性も含め、NAVER-ソフトバンク間で深い議論を行わなければならず、ソフトバンクのメッセージに注目が集まっている。