
三井住友がイギリスのヘリコプターリース会社を約10億ドル(約1,471億円)で買収することが決まった。これにより、三井住友グループのヘリコプター保有機数は世界最大規模に達し、増加する緊急医療や災害救助などの需要に対応する方針だ。
日本経済新聞は10日、三井住友ファイナンス&リース(FL)傘下のSMFL LCIヘリコプターズ(SMFLH)が、オーストラリアの金融大手マッコーリー・グループ系列の資産運用会社が保有するイギリスのマッコーリー・ロータークラフトを買収すると報じた。買収は今年6月末までに完了し、同社はSMFLHの完全子会社となる予定。
マッコーリーが運営するヘリコプター機数は昨年末時点で約120機と業界で3位。これにより、三井住友FLグループの保有機数は発注分を含め約190機から300機以上に増加する見込みだ。これにより、業界首位のアイルランドのマイルストーン・アビエーショングループ(322機)に迫る規模となる。
2024年の世界ヘリコプターリース市場規模は499億ドル(約7兆3,400億円)で、前年比約10%の成長が見込まれている。これは航空機リース市場全体の30%に相当し、特に欧州やアジアでは緊急医療や災害救助の需要が増加している。2032年には市場規模が1,013億ドル(約14兆9,007億円)に達する見込みだ。
ヘリコプターの供給は依然として不足しており、特に欧州ではロシアのウクライナ侵攻に伴い、多くの軍用ヘリコプターが必要とされているため、新型機体の調達が難しくなっている。このような状況では、保有機数が多いほど新機体の導入に有利な条件を得やすい。三井住友FLは事業拡大を見据えて大量のヘリコプターを確保する必要があると判断した。
三井住友FLグループとマッコーリーはともに、10席程度の中型ヘリコプターを緊急医療や災害救助に使用することに強みを持っており、両社の連携によって事業面でのシナジーが期待されている。
ヘリコプター1機あたりの価格は数十億円に達するため、自治体や医療機関が直接購入するよりも、リースを活用してコストを抑えるケースが多い。現在、世界のヘリコプターリース比率は約19%で、航空機に比べて市場の拡大余地が大きい。
三井住友FLの航空機リース事業は新型コロナウイルスの影響で旅客需要が減少したが、ヘリコプターは緊急医療需要が堅調で、パンデミック中も高い稼働率を維持した。今後、ヘリコプターリース事業を航空機リースに次ぐ重要な事業として育成し、リスク分散を図る方針だ。
三井住友FLは2020年にイギリスのヘリコプターリース大手LCIインベストメントと共同でSMFLHを設立し、ヘリコプターリース事業に参入。2023年にはLCIに35%出資して事業を拡大してきた。今回の買収が完了すれば、FLグループのヘリコプターリース事業は運用資産ベースで約3000億円規模に成長する見込みだ。