
イーロン・マスクCEO率いるグローバル電気自動車大手「テスラ」が、第1四半期に業績不振に陥った。電気自動車市場の一時的な需要減退(キャズム)に加え、ドナルド・トランプ大統領の側近として台頭したマスクCEOへの否定的な見方がテスラの販売量と業績に悪影響を与えたとの分析が出ている。政治問題に足を引っ張られる中、マスクCEOは「テスラへの専念」を表明した。
22日(現地時間)、テスラは第1四半期(1~3月)の売上高が193億3,500万ドル(約2兆7,575億円)だったと発表した。前年同期比9.38%減で、金融情報会社LSEGが集計したウォール街の平均予想211億1,000万ドル(約3兆106億円)を下回った。主力の自動車事業の売上高が前年比約20%減少したことが主因だ。営業利益は65.8%急減の3億9,900万ドル(約569億3,136万円)、純利益は70.5%減の4億900万ドル(約583億5,821万円)にとどまった。
テスラは売上高減少の要因として、車両引き渡し実績不振、新製品である「モデルY」の生産に向けた4工場のライン再編、車両の平均販売価格(ASP)の引き下げなどを挙げた。人工知能(AI)プロジェクトへの投資増加も収益を圧迫した。同社は「急激な貿易政策の変化がテスラと競合他社のグローバルサプライチェーンとコスト構造に悪影響を及ぼし、自動車・エネルギー市場の不確実性が高まり続けている」と指摘した。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、テスラは米国で販売する車両をテキサス州とカリフォルニア州で生産しているが、部品の多くをメキシコなど近隣国から調達しており、テスラの全部品の20%がメキシコ製だという。
海外メディアは、テスラの業績不振の原因として、トランプ大統領再選後に拡大したマスクCEOの国内外での政治活動を指摘している。マスクCEOが米政府効率化省(DOGE)の局長として連邦機関の支出削減を主導する過程で、テスラへの反感が高まったとされる。米経済メディアCNBCは、9~13日に米国人1,000人を対象に実施した調査で、回答者の47%以上がテスラに対して否定的な見方を持っていると報じた。別の米自動車大手、ゼネラルモーターズ(GM)に対する否定的な見方が10%にとどまったのと対照的だ。
マスクCEOについても、回答者の約50%が否定的な見方を示した。特に民主党支持層でマスクCEOへの不支持が顕著だった。マスクCEOに対する純支持率(好意的に評価する割合から否定的に評価する割合を差し引いたもの)は、民主党支持層で-82と極めて低く、無党派層で-49、共和党支持層では+56だった。
CNBCは「最近の一般大衆と投資家に共通しているのは、テスラやマスクCEOに対して好感を持っていないことだ」と指摘した。今年に入り、米国ではテスラ店舗への襲撃や、テスラ車両・充電所への放火事件が相次いでいる。マスクCEOへの反感から、所有するテスラ車を安値で売却する消費者も増えているという。
業績不振に危機感を抱いたマスクCEOは、来月から政府業務を縮小し、テスラ経営に専念すると宣言した。この日の電話会議で「政府内でのDOGEの主要な業務は、ほぼ完了した」とし、「来月(5月)からは、その業務に費やす時間が大幅に減る」と述べた。
ただし、DOGE局長の辞任については否定した。マスクCEOは「我々が阻止した無駄遣いと不正が再び押し寄せる可能性があるため、機会があれば週に1、2日は政府業務に時間を割くかもしらない」と述べた。彼はトランプ大統領への支持は変わらないと強調しつつ、テスラの業績に悪影響を与えた関税政策については「引き続き関税の引き下げを主張している」と明かした。
マスクCEOは最近市場で取り沙汰されているテスラ危機説も一蹴した。彼は「私は会社の将来について極めて楽観的だ」と自信を示した。テスラは当初の計画通り、6月にテキサス州オースティンで完全自動運転タクシーの営業を開始する予定だ。同社が開発中のヒューマノイドロボット「オプティマス(Optimus)」については、「今年末に数千台の生産を開始し、4年以内に年間生産台数100万台に到達できる」との見通しを示した。
テスラにより注力するというマスクCEOの発言に市場は安堵した。年初来37.26%下落していたテスラ株は、この日の時間外取引で終値(237.97ドル・約3万3,966円)比5.39%上昇した。また、テスラは低価格新車の発売が少なくとも3か月遅れる可能性があるというロイター通信の報道を否定し、「より安価なモデルを含む新車の発売計画は、今年上半期の生産開始を目指して進行中」だと明らかにした。