
米政府は今月末のドナルド・トランプ大統領の就任100日を前に、ウクライナ戦争を一段落させるため、ウクライナに再び譲歩を求めた。米国はウクライナにクリミア半島と北大西洋条約機構(NATO)加盟の放棄を迫る一方、ロシア側には特段の条件を付けなかった。
米、クリミア半島・NATO放棄を迫る
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は20日(現地時間)、西側政府関係者の話として、17日のパリ会合で米国がウクライナ政府にこうした提案を行ったと報じた。これまで欧州を除外してロシアと直接停戦交渉を行ってきた米国は、この日パリで欧州代表らと事実上初の高官級停戦協議を開始した。パリ会合には米国を含むウクライナ、フランス、イギリス、ドイツの5か国代表が参加した。
関係者によると、米国は今回の会合でウクライナに停戦条件を含む機密文書を手渡した。同文書には、ロシアが2014年に一方的に不法併合したクリミア半島をロシア領と認める内容が含まれていた。同時に、ウクライナのNATO加盟断念も明記された。また、欧州最大の原子力発電所で現在ロシアが占拠中のウクライナ・ザポリージャ原発を米国管理下の中立地域とする条項も盛り込まれたという。
トランプ大統領は前政権時、ロシアのクリミア半島占拠を認めなかった。当時の国務長官マイク・ポンペオ氏は2018年にクリミア半島併合問題を「民主主義国家の国際的原則への脅威」とし、「いかなる国も武力で国境を変更できない」と強調した。米議会もロシアのクリミア半島領有権を認めない法律を可決している。
NATO加盟禁止条項は、トランプ大統領がすでに何度も言及してきた主張だ。米国のウクライナ特使、キース・ケロッグ氏は19日、米フォックスニュースとのインタビューで「NATOは議論の対象ではない」と述べた。またトランプ大統領は先月19日、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、米国がザポリージャ原発を引き継いで管理する案を提案した。
今週中に回答がなければ交渉断念を示唆
WSJは、米国がウクライナに圧力をかける一方、ロシアに対しては曖昧な態度を取ったと伝えた。現在ロシアは2022年の侵攻以降に奪取したウクライナ領土について、米国が合法的なロシアの領有権を認めることを望んでいる。WSJは米国が領有権を認めることを拒否しつつも、当該地域からのロシア軍撤退は要求しなかったと指摘した。先月、ロシアの海外投資・経済協力担当特使、キリル・ドミトリエフ氏は、サウジアラビアでの米国との会合で、対ロシア制裁の解除と両国の経済協力回復を主張した。
米国のマルコ・ルビオ国務長官は18日、パリで「数日以内に短期的な停戦が可能かどうか判断しなければならない」とし、「不可能なら、我々は手を引くだろう」と述べた。WSJは、米国が今週ロンドンで開催される5か国による2回目の会合でウクライナの回答を期待していると説明した。WSJは、ロンドン会合で和解が成立すれば、米国の中東担当特使、スティーブ・ウィトコフ氏が直ちにロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談する可能性もあると伝えた。
米国が圧力を強める背景には時間的制約もある。トランプ大統領は昨年の大統領選挙運動中、自身が就任すれば24時間以内にウクライナ戦争を終結させると断言していた。ケロッグ氏は1月8日のインタビューで、トランプ大統領が「就任後100日以内」の停戦を望んでいると述べた。トランプ大統領は今月30日に就任100日を迎える。トランプ大統領は17日、記者団に対し、ウクライナの鉱物資源の持分半分を受け取る鉱物協定について「24日に署名されると思う」と語った。
一方、西側関係者は、米国が今回のパリ会合で欧州のウクライナ平和維持軍派遣や西側のウクライナ軍事支援に反対しなかったと伝えた。