
ウラジーミル・プーチン露大統領が「平和の使者」を演じている。2年余りぶりの「復活祭休戦」を実施し、開戦以来初めてウクライナとの二国間交渉の可能性に言及した。
プーチンは21日(現地時間)、ロシアメディアとのインタビューで「ロシアは常に休戦に前向きだ」と述べ、そのため復活祭休戦を提案したと説明。ウクライナ側も同様の姿勢を示すことを期待すると語った。
これに対しペスコフ大統領報道官は「大統領はウクライナ側との対話準備があると繰り返し述べてきた」とし、プーチンがウクライナ側との交渉・協議の可能性を示唆したと説明した。
戒厳令下で任期を延長中のゼレンスキー大統領の「正統性」を問題視し、ウクライナの政権交代を要求してきたプーチンの立場を考えれば、今回の二国間交渉への言及は明らかな前進だ。
ただし、これを純粋な「和平の意思表示」と解釈するのは早計だろう。休戦交渉の根本的条件が変化するかどうかは不透明だ。
プーチンは一貫して「ロシアは対話を拒否したことはない。対話を拒否しているのはウクライナだ」と主張してきた。
ウクライナとの二国間交渉に前向きな姿勢を示したことは評価できるが、「ロシアは対話の用意がある」という発言は、逆に従来の立場を繰り返したとも解釈できる。
二国間交渉への言及のタイミングも、根本的な変化への疑念を抱かせる。
プーチンは、トランプ米大統領が仲介努力の中止を警告した直後に、復活祭を機に30時間の休戦を宣言し、休戦終了直後にはウクライナとの二国間交渉の可能性に言及した。海外メディアと専門家らがプーチンのこのような「平和マン演出」を「トランプへの配慮」と分析している。
バロー仏外相は22日、地元ラジオで「プーチンが宣言した意外の復活祭休戦は、トランプ大統領の焦りや怒りを抑えるための求愛作戦だった」と評した。
欧米の高官がウクライナの終戦案を初めて協議する中でのプーチンの二国間交渉への言及は、解釈の余地を残す。
ウクライナと米国、欧州3カ国(仏独英)は17日、パリでウクライナの終戦策を協議。その後続措置として、ウクライナと米英仏が23日にロンドンで2回目の会合を開く。
米国は初回会合で▲ロシアのクリミア併合承認▲ウクライナのNATO加盟排除▲ザポリージャ原発周辺の中立化などの終戦構想を提示したとされる。いずれもウクライナに不利な条件だ。
こうした状況下でプーチンが復活祭休戦を実施し、二国間交渉に言及しながら平和の使者を演じたのは、「ウクライナ責任論」を誘導する狙いがあると解釈される。
米国の終戦案にゼレンスキーが反発したり、交渉が難航した場合、逆に「平和を望むプーチン」の「善意」をウクライナが踏みにじったという非難が生まれる可能性がある。
プーチンの最終目的は、トランプにゼレンスキーを平和協定の障害物と見なさせ、責任をウクライナに転嫁することにあるとみられる。
パリのカーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのスタノバヤ上級研究員は復活祭休戦について「極めて短期間の休戦なら(プーチンにとって)失うものはなく、真に平和を望む人物に見せるのに有利だ」と分析している。
プーチンが容易な外交的勝利をもたらす「切り札」として復活祭休戦と二国間交渉を持ち出したと解釈できる。
プーチンの思惑通りになれば、最終的にゼレンスキーだけが「愚か者」となる暗澹たる状況が展開される可能性がある。
トランプは18日、記者団との質疑応答で「当事国(ロシアとウクライナ)の一方が状況を非常に困難にするなら、『君は愚か者だ。我々は(これ以上の仲介努力を)辞退する』と言うだろう」と警告していた。