
イーロン・マスク氏が率いる電気自動車大手テスラは、今年第1四半期に市場予想を下回る業績を発表したにもかかわらず、株価は上昇傾向を示している。マスク氏が政治活動から手を引き、経営に注力する意向を示したことで、投資家心理が一時的に改善したとみられる。しかし、業績低迷や関税リスクなどの基礎体力の悪化要因は依然として残っており、今回の株価上昇が長続きするかには疑問の声も上がっている。
25日の金融投資業界の関係者によると、テスラは22日(現地時間)に発表した2023年第1四半期の総売上高が193億3,500万ドル(約2兆7,733億224万円)で、前年同期比9%減少した。1株当たり純利益(EPS)は0.27ドル(約39円)で、前年同期比40%減少した。金融情報会社LSEGが集計したウォール街の平均予想は、売上高211億1,000万ドル(約3兆281億1,011万円)、EPSは0.39ドル(約56円)だった。第1四半期の純利益は4億900万ドル(約586億8,111万円)にとどまり、前年同期の13億9,000万ドル(約1,994億2,970万円)から71%も急減した。
事業部門別では、主力の自動車事業の売上高が139億6,700万ドル(約2兆39億983万円)で、前年同期比20%減少した。一方、エネルギー部門やサービス・その他の売上はそれぞれ67%、15%増加した。テスラは売上減少の要因として、車両の納車実績の不振や、全4工場で進行中のモデルY新製品の生産、車両の平均販売価格(ASP)の引き下げなどを挙げた。テスラはこれに先立ち第1四半期の納車台数が33万6,681台で、前年同期比13%減少したと発表している。
業績が期待に届かなかったにもかかわらず、テスラ株は23日に5.37%上昇し、翌24日も続伸した。その背景には、マスク氏が政治活動から手を引き、再びテスラの経営に注力するとの姿勢を打ち出したことがある。マスク氏はカンファレンスコールで「政府効率部(DOGE)の主要な作業はほぼ終了した」と述べ、「来月からははるかに多くの時間をテスラに割く」と語った。ドナルド・トランプ米大統領は翌日、「我々はいつかマスク氏を政治活動から離れさせて、テスラ経営に集中させるべきだ」と述べた。
それでも市場では、今回の反発が一時的なものにとどまるとの見方が優勢だ。マスク氏の政治活動リスクが解消されても、関税によるテスラの業績減少問題は依然として残るからだ。NH投資証券アナリストであるコ・ミンソン氏は報告書で「関税政策の影響により、自動車およびエネルギー事業の売上・収益性の減少が予想され、マクロ環境に伴う否定的影響は避けられない」とし、「自動運転やヒューマノイドロボットなどの次世代事業による本格的な収益貢献は来年下半期以降になると予測され、当面はバリュエーションの重荷が続く」と指摘した。
同氏は今年第2四半期の業績から関税問題が本格的に反映されると見ている。エネルギー事業は改善傾向を示しているが、中国部品の輸入比率が高いため、関税の影響を大きく受けるとの分析だ。
ウォール街でも同様の見解が広がっており、テスラに対する目標株価が次々と引き下げられている。ウェルズ・ファーゴはテスラの目標株価を130ドル(約1万8,653円)から120ドル(約1万7,218円)に引き下げ、投資判断は「アンダーウェイト」を維持した。ウェルズ・ファーゴは「関税リスクが大きく、新たに発売される低価格モデルも『安価なモデルY』程度に過ぎない」とし、「株価は再び下落すると予想される」と述べた。
JPモルガンも目標株価を120ドルから115ドル(約1万6,500円)に引き下げ、「アンダーウェイト」の投資判断を維持した。JPモルガンは「予想以上に事業の基礎体力悪化が進行している」とし、「投資家の期待値を再設定する兆候」と評価した。
TDコーウェンはテスラに対する「買い」推奨を維持しつつも、目標株価を388ドル(約5万5,672円)から330ドル(約4万6,761円)に引き下げた。また、「ブランドや関税、マクロ経済などの分野で基礎体力が課題となる可能性がある」と説明した。また、ゴールドマン・サックスも目標株価を260ドル(約3万7,306円)から235ドル(約3万3,719円)に、HSBCも目標株価を125ドル(約1万7,957円)から120ドルに引き下げた。