パリオリンピックに参加した北朝鮮選手団がサムスン電子のスマートフォンを受け取ることが、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に違反する恐れがあるとの問題が提起されていたが、国際オリンピック委員会(IOC)は、北朝鮮選手団がサムスンのスマートフォンを受け取っていないと明らかにした。
8日(日本時間)、IOCは「北朝鮮選手団がサムスンのスマートフォンを受け取っていないことを確認した」との公式声明を発表した。
IOCはパリオリンピックに参加する全ての選手に、オリンピック公式スポンサーであるサムスン電子が特別に製作したスマートフォン「Galaxy Z Flip 6」を提供した。
北朝鮮オリンピック委員会(NOC)も選手村内のサムスンオリンピック体験館でスマートフォンを一括して受領したとされ、対北朝鮮制裁決議違反の疑惑が持ち上がったが、IOCは確認手続きを経てこの疑惑を否定した。
IOCの発表に先立ち、韓国の統一部関係者は「北朝鮮選手のサムスン携帯電話の受領は、対北朝鮮制裁決議に違反する可能性があるが、違反の有無についての最終的な回答はIOCが行うべき状況だ」と述べていた。
また、イ・ジェヨン外交部報道官も同日、定例ブリーフィングで「国連安全保障理事会は決議2397号第7項に従い、全ての産業用機械を北朝鮮に直接・間接的に供給、販売、移転することを禁じている」とし、「スマートフォンもこの決議に該当する禁輸品である」と説明した。
2017年、国連安全保障理事会は対北朝鮮制裁決議第2397号を採択した。この決議では、HSコード(国際統一商品分類体系)85に該当する電気機器を北朝鮮に直接・間接的に供給、販売、移転することを禁じている。これは、軍事的に再利用される可能性を懸念したもので、スマートフォンもHSコード85に含まれている。
オリンピックでサムスン電子のスマートフォンを北朝鮮選手団に提供することをめぐる議論は、今回が初めてではない。
IOCは、2016年リオデジャネイロオリンピックでも、サムスン電子がスポンサーとなって製作したスマートフォンを全ての参加選手に提供した。しかし、北朝鮮選手に配布されたスマートフォンは、同行した北朝鮮の関係者に押収された可能性があると指摘された。その後、2018年平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック組織委員会が制裁違反を懸念し、北朝鮮選手には帰国前にサムスンのスマートフォンを返却する条件で提供するとしたところ、北朝鮮側が受領自体を拒否したこともあった。
一方、8年ぶりに夏季オリンピックに出場した北朝鮮選手団の一部は、すでに試合を終え、北朝鮮に帰国した。