韓国の単独世帯は、全世帯の34.5%である。一人で暮らす単独世帯の急激な増加は、独身時代の到来を予告している。
「人生は一度きり、YOLO!」と叫んでいた韓国の2030世代が徐々に姿を消している。急激な失業率の増加と景気の冷え込みは、コロナ禍以降の爆発的な消費を主導してきた「YOLO族」を消極的にさせた。
「自分が大切だ」と高級なホテルバカンスとおまかせを楽しんでいたMZ世代
不確実な未来のために犠牲を払うのではなく、今現在の幸せを追求する生活をモットーとする人々を「YOLO族」と呼ぶ。完全な「私」のためのYOLO(You Only Live Once)は、韓国の単独世帯の増加と相まって20~30代の消費傾向に大きな影響を与えた。
ホテルで豪華なバカンスを楽しむという意味の「ホカンス」、自分に心理的な満足を与える費用であれば価格を気にしないという意味の「ナシンビ」に、自己誇示のためにお金を自慢する「フレックス」など、彼らの消費トレンドを代表する新造語が溢れ出した。
1回の食事に少なくとも12万ウォン(約1万3000円)、多くて20万円(約2万1500円)を超える高価な「おまかせ」の風潮も吹き荒れた。おまかせはMZ世代の代表的な象徴であった。社会的な雰囲気が変わると、各種企業はYOLO族のライフスタイルを狙ったマーケティングを次々と打ち出した。YOLOは個人の生活の変化にとどまらず、韓国社会の変化も引き起こした。
「必要なものだけを買う」..利子の返済だけでも厳しい20~30代
かつてのYOLO族が、2020年代に入り生活の価値観を変え「YONO族」に転向する動きが現われた。高物価・高金利に疲労を感じる若者たちが徐々に、必要なものだけを購入する「YONO(You Only Need One)」に切り替えているのだ。インフレーションが長期化し、お財布事情が改善されないため、過去の消費パーティーも終わりを迎えている。
サラリーマンの単独世帯であるチョ・ソヒ(37・女性)さんは「急騰する物価を身をもって感じている」と述べ、「以前とは違って、今は必要なものだけを買うようになった。頻繁に頼んでいたデリバリーも週1、2回に減った。以前やっていた運動などの趣味もやめて、コーヒーも外で飲まない」と話した。
韓国の統計庁によると、世帯主の年齢が39歳以下の2030世代の昨年の平均所得は6590万ウォン(約707万円)で、前年に比べ1.9%増に過ぎなかった。これは消費者物価上昇率3.6%の半分の水準である。一方、同期間の40〜50代の世帯主の世帯所得はそれぞれ6%と3.2%増加し、20~30代よりも改善されいた。
高金利による利子負担も増加した。39歳以下世帯主の昨年の平均借入元利金返済額は1671万ウォン(約180万円)で、前年より17.6%増加した。20代の世帯主の元利金返済額は47.1%も増加し、40代と50代の元利金返済額の増加率はそれぞれ7.5%、0.7%で一桁にとどまった。
「YOLOしていたら貧乏になる」現実を自覚した「貧乏消費」
このような影響は昨年、若者の間で極端な消費節約形態である「貧乏部屋」や「現金チャレンジ」、「無支出チャレンジ」などが流行したことにもつながった。
これについて、仁荷(インハ)大学消費者学科のイ・ウンヒ教授は「経済的な目標を立てる上で最も大きな部分が住居の確保である。結婚すれば子どもも産まなければならないが、YOLOで生きていては目標達成ができない」と指摘した。
続けて「結局は後始末ができなくなる。現実の持続可能性が難しい。より現実的な目標を立てながら自然とYONO生活に変わるのではないかと思う」と説明した。