1964年、当時18歳だったチェ・マルジャ氏は、性的暴行を試みた加害者の舌を噛み傷害を負わせたとして、重傷害罪で拘束され、懲役10か月、執行猶予2年の判決を受けた。チェ氏は、この行為が性的暴行に抵抗する過程で発生したものであり、正当防衛に当たると主張したが、裁判所はその主張を認めなかった。
事件発生から56年後の2020年、チェ氏は再審請求を行った。初めに釜山地裁と釜山高裁で棄却されたがその後、大法院はチェ氏の主張に新たな証拠が十分にあるとして原審を破棄し、事件を釜山高裁に差し戻す決定を下した。
大法院第2部（主審・オ・ギョンミ大法官／最高裁判所の判事）は、チェ氏が1964年7月上旬から8月1日まで不法拘禁され、強圧的な取り調べを受けていた可能性が高いことを認定し、検察による不法拘禁に関する証言の信憑性があると判断した。また、加害者には強姦未遂容疑が適用されず、特殊住居侵入・特殊脅迫容疑のみが認められ、懲役6カ月、執行猶予2年の判決が下された。
さらに、「検察の行為は、刑法上の職権濫用による逮捕・監禁罪を構成し、これには公訴時効が完成し、有罪判決を得ることができない事実上および法律上の障害がある」とされた。また、原審は「チェ氏の証言の信憑性を覆すための十分かつ納得のいく反証や事情が存在するか」について事実調査を行うべきであったと指摘された。
大法院による破棄差し戻し判決を受け、控訴審で「チェ氏の証言の信憑性」が認められれば、再審請求が認められる可能性が高い。再審請求が認められた場合、次の段階では「チェ氏の行為が正当防衛に該当するかどうか」が争点になる見込みである。