台湾の首都台北の第2空港である松山(ソンシャン)空港をはじめ、滑走路の短い海外の空港では、航空機が滑走路を逸脱する「オーバーラン」に備えて、緩衝装置のEMAS(Engineered Materials Arresting Systems)を導入していることが明らかになった。
29日、韓国の務安(ムアン)国際空港のチェジュ航空機事故の翌日に開かれた台湾の立法院での公聴会で、台湾交通安全委員会は2004年のオーバーラン事故を機にEMASが設置されたと発表した。
松山空港の滑走路の長さは2.6kmで、務安空港の2.8kmより短い。軽量で容易に砕ける特殊コンクリートブロックなどで作られたEMASは、滑走路が短い空港で航空機と衝突すると即座に破壊され、機体の速度を急激に減速させる。
松山空港では20年前、トランスアジア航空の旅客機が滑走路を逸脱し、排水溝に前輪が落ち込む事故が発生した。その後EMASが設置され、2009年の完成以降は小型機だけでなく、大型機の着陸も可能になった。
台湾交通安全委員会は、チェジュ航空の事故機であるボーイング737-800が、台湾の国営航空会社である中華航空でも10機運航されていることを踏まえ、定期点検の強化を航空会社に要請した。
EMASは松山空港のように建築年が古く、市街地と近い空港に多く追加される設備だ。日本の東京・羽田空港のA滑走路にも、2020年にスウェーデン企業の「Green EMAS」を導入した。A滑走路の長さは3kmで、3.36~3.5kmのC・D滑走路と比べて短い。Green EMASはコンクリートブロックの代わりに、発泡ガラスフォームなどのエネルギー吸収材を使用している。羽田空港では、1999年に滑走路安全区域の確保距離が40mから90~240mに拡大されたため、1988年に建設され延長が困難だったA滑走路にEMASが導入された。
米国では連邦航空局(FAA)が1990年代に、滑走路安全区域を十分に確保できない空港の安全性向上のため、EMAS技術を開発した。ニューヨークのJFK国際空港のような大規模空港はもちろん、バージニア州ロアノーク空港など小規模の地方空港まで、米国内71空港に計121のEMASが設置されている。
FAAは「標準の安全区域を確保できない場合でも、EMASを設置すれば滑走路をオーバーランする航空機を減速または停止させることができる」と説明している。これまでEMASのおかげで滑走路を逸脱した22機の航空機が安全に着陸し、合計432名の乗客の命が救われた。
今年7月には、コロラド州テルライド地方空港で個人用ジェット機が離陸中に十分な速度を出さず、急遽着陸を試みた際に滑走路を逸脱する事故が発生した。この事故で航空機は下部に大きな損傷を受けたが、機長と副操縦士はEMASのおかげで無傷だった。
米国家運輸安全委員会(NTSB)のロバート・サムウォルト元会委員長(68)は29日、韓国メディアとのインタビューで「滑走路の端と(衝突した)構造物の間にEMASがあれば、航空機の速度を減速させられたのではないか」と述べた。