亡き娘の夢を叶えた両親の感動物語が話題に
家族でカフェを開きたいという夢を叶えることなくこの世を去った娘。
その約束を果たすため、長年勤めた会社を辞め、カフェオーナーへの道を選んだ父親の胸に迫る物語が伝えられた。
先月19日、「フジニュースネットワーク(FNN)」は、57歳でカフェを開業した江口浩二氏の物語を紹介した。
最近カフェをオープンした江口氏は、2022年8月に24歳の娘・穂花を亡くしている。
明るく社交的だった穂花は、大学卒業を控えた時期に下腹部の膨満感を訴え、病院での検査により卵巣に腫瘍が見つかった。その結果、卵巣がんと診断された。
治療を開始したものの、医師からは余命3か月という厳しい宣告を受けた。
穂花は残された時間を家族や友人と過ごし、多くの思い出を作った。しかし、病状が悪化し、自分で体を動かすことすら出来なくなった。
江口氏は「娘は立つのも難しくなり、ソファに座っていても立ち上がろうとすると『あれ?』と力が入らず、戸惑っていました。食事も水も上手く摂れなくなり、これは亡くなる数日前のことです」と、涙ながらに語った。さらに、「娘は『やっぱり死ぬのかな』と言っていました。答えられませんでした。その言葉に何も答えられず、『そんなことはない』としか言えませんでした」と説明した。
続けて「数日後、妻が朝5時前に目を覚まし、娘の様子を見に行くと、動かなくなっていました。最期は穏やかな表情で別れの時を迎えました」と語った。
35年勤めた会社を退職、娘の夢を継ぎ製菓を学ぶ
娘が生前、「家族でカフェを開きたい」と話していた夢を叶えるため、江口氏は35年間勤めた会社を退職し、佐賀県西九州大学調理製菓専門学校に入学した。
そこで製菓技術を学び、1年間の課程を修了した江口氏は、2023年3月に無事卒業を迎えた。
卒業から約1か月後、江口氏は娘との約束を果たすため、本格的にカフェ開業の計画を進めた。
カフェは自宅のガレージを改装して作ることにした。
工事開始から約3か月後、落ち着いた雰囲気の店が完成した。
準備の間、穂花の友人たちも進んで手伝いに駆けつけ、店の開店を支えた。そして2024年12月、江口氏と妻の美千代氏は、穂花の誕生日に合わせてカフェをオープンさせた。
店名は「Coffee Roast HONO」。穂花が亡くなって約2年4か月後、両親は娘との約束を果たした。
妻の美千代氏は、「娘が喜んでくれるよう頑張りたい。いつか『お母さん頑張ったね』という言葉を聞きたいです」と思いを語った。
キッチンでは江口氏が専門学校で習得した技術を活かしてクッキーやパンを作り、ホールは美千代氏が担当している。
店には、夫婦を応援する知人や友人が頻繁に訪れているという。
穂花と小学校から高校まで同じ学校に通っていた友人は、「気軽に立ち寄って、穂花のことを思い出せる場所にしたいです。これからも、ここが第二の実家のような存在になればと思っています」と語った。
カフェには穂花の笑顔の写真が飾られている。写真の中の穂花は、明るい表情で、まるで約束を果たした両親をそっと見守り、応援しているかのようだ。
亡き娘の夢を叶えた両親と、その願いを大切に支えた友人たちの姿は、訪れる多くの人々に感動を与えている。