ドナルド・トランプ大統領の長女イヴァンカ・トランプ氏が、女優オードリー・ヘプバーンのドレスを再現した衣装で登場し、物議を醸している。
イヴァンカ氏は20日（現地時間）、父親が主催した「キャンドルライトディナー」に「オードリースタイル」で姿を現した。彼女のドレスは、オードリー・ヘプバーンが映画『麗しのサブリナ』で着用したジバンシィのドレスを忠実に再現したもので、上半身が体にフィットし、スカートが広がるデザインでヴィンテージ風の美しさを強調。さらに、黒い花の刺繍で女性らしさを演出していた。
映画のオードリー・ヘプバーン同様、アップヘアに肘丈の黒い手袋、スティレットヒール、ダイヤモンドのネックレスを身につけていた。イヴァンカ氏のドレスは、高級ブランドのジバンシィが彼女のために特別にデザインしたとされる。しかし、このドレス選びに対する世間の反応は芳しくない。『麗しのサブリナ』は、運転手の娘が財閥の兄弟と恋に落ちるシンデレラストーリーだ。特にヘプバーンのドレスは、労働者階級の娘が上流社会の中心人物へと変貌する瞬間を象徴する重要な小道具として使用された。そのため、米国の財閥家で育ったイヴァンカ氏が、ヘプバーンのドレスが持つ意味を全く理解していないという批判が殺到している。
米ファッション誌「グラマー」は「イヴァンカ氏は1950年代を彷彿とさせる選択で、伝統的な保守的美学をアピールしようとしたようだ」と指摘し、「過去への過度な執着」と評した。ファッション誌「ヴォーグ」の編集者リラ・ラムジー氏は「オードリー・ヘプバーンを引き合いに出す誤った方法」と題した記事で、「極端な政治家の娘が誰からも愛される女性に扮するのは皮肉そのものだ。特に、ナチス占領下のオランダでヘプバーンが飢餓寸前だったことを考えると、なおさらだ」と批判した。
オードリー・ヘプバーンは第二次世界大戦中、オランダで反ナチ活動を行ったレジスタンスの一員であり、孤立した連合軍空挺部隊員を安全地帯へ誘導し、食料やメッセージを届ける役割を担った。また、生涯を通じて貧しい子どもたちを支援する活動に尽力し、ユニセフ親善大使としての功績が認められ、米大統領から勲章を授与されている。
ヘプバーンのファンたちは、米オンラインコミュニティ「Reddit」で「これは彼女への侮辱だ。ヘプバーンは女優になる前、イヴァンカ氏の父が模倣する政治運動に反対する人物だった」、「ヘプバーンはイヴァンカ氏とは全く異なる人生を歩んだ。だからこそ今でもアイコンとして記憶されているのだ」といった批判的なコメントを投稿している。
論争が拡大する中、ヘプバーンの長男も声明を発表した。ショーン・ヘプバーン・ファーラー氏は英紙「デイリー・メール」に対し、「母からインスピレーションを受け、優雅さと品格を追求するのは自然なことだ」としながらも、「母の政治的信念はトランプ氏とは相容れないものだった」と述べた。さらに「母の優雅さは内面の美しさと精神に根ざしており、現代のような混沌とした時代において、多くの著名人の道標となっている。母は権利を奪われた世界中の子どもたちのために闘った」と付け加えた。
批判が高まる中、イヴァンカ氏はホワイトハウスを通じて「ジバンシィがデザインしたドレスを着用できたことを光栄に思う」とし、「驚くべき精緻な職人技で原作の芸術性と優雅さを再現した傑作を生み出してくれた」と述べ、このドレスを着る「特権」に感謝の意を表した。さらに「長年私にインスピレーションを与え続けてくれたオードリー・ヘプバーンの遺産をこのような形で称えることができるのは大きな特権だと考えており、この瞬間を実現してくれたジバンシィチームに心から感謝している」と述べた。