「人を恨まず・人と争わず」…108歳現役理容師の長寿の秘訣

ギネス世界記録に認定された108歳の女性理容師が話題になっている。
12日、香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、箱石シツイさん(108)は5日、栃木県那珂川町でギネス世界記録の認定証を手にした。94年間も理容師として活躍してきた箱石さんは今も現役で、毎月多くの常連客の髪をカットしている。ギネス世界記録という目標を達成した彼女は「地域のみなさまのおかげです。胸がいっぱいです」と喜びを語った。
箱石さんは1916年11月10日、那珂川町の農家に生まれ、14歳で理容師を目指して上京。美容室で見習いとして働き、20歳で理容師免許を取得した彼女は1939年、夫と共に東京で初めての理容室をオープンした。しかし、第2次世界大戦が彼女の人生を一変させる。夫は戦争で命を落とし、東京大空襲で理容室も失ったため、2人の子どもと共に栃木県へ避難することになった。
1953年、故郷の那珂川町で再び理容室を開店し、今日まで営業を続けながら常連客を迎えている。戦前に使っていたハサミも今なお大切に保管しているという。「この歳になって、あとどれだけ続けられるか分からないけれど、できる限り仕事を続けていきたい」と現役理容師としての思いを語った。

2020年には東京オリンピックの聖火ランナーにも選ばれるという栄誉を獲得。聖火リレーに向けて、毎日オリンピックトーチと同じ重さの棒を持ち、1000歩以上歩く練習を積み重ねた。「東京オリンピックのトーチを持った時、本当に生きている実感がわいた」と当時を振り返っている。
箱石さんの子どもたちも充実した人生を送っており、息子は理容師免許を取得し、母親の伝記を執筆。娘は脳性麻痺と向き合いながらも障がい者支援のボランティア活動に取り組んでいる。家族全員が箱石さんのギネス記録認定式に参加した。
長寿の秘訣について箱石さんは、健康的な食生活と規則正しい運動を挙げる。軽めの食事を心がけ、毎朝の散歩や肩の運動、脚のストレッチを欠かさないという。また母から教わった「人を恨まず・人を妬まず・人と争わず」という3つの心がけも紹介。この教えのおかげで、長年の苦難を乗り越えながらも前向きな姿勢を保ってこられたと語る。「(今年で)109歳ですから、110歳まで頑張りたいと思います」と、箱石さんは自信に満ちた笑顔を見せた。