中絶勧告を拒否し出産を選んだ夫婦

先月14日(現地時間)、海外のオンラインメディア「バスティーユポスト(Bastille Post)」は、医師から中絶を勧められながらも出産を決意した夫婦のエピソードを改めて紹介した。
その主人公は2023年当時23歳だったマリアン・シュトラウス(Mariaan Strauss)と、1歳年上の夫ヘンドリック・シュトラウス(Henrik Strauss、26歳)だ。
米メディア「ニューヨーク・ポスト」によると、2人は2021年に第一子の妊娠を知り、幸せな気持ちでいっぱいだった。しかし妊娠13週目、夫婦は思いもよらない知らせを受ける。最初の超音波検査で、胎児の腕が発達していないことが判明した。
主治医はしばらく沈黙した後、「子どもの将来のため」として中絶を提案した。
マリアンは医師の助言に納得できなかったと話す。
当時を振り返り、彼女はこう語った。「社会は残酷です。『私たちの子どもは社会に受け入れられるだろうか?嘲笑されたり、いじめられたりしないだろうか』と何度も考えました。主治医の言葉が頭の中で繰り返されました。『中絶しないのは親のエゴだ。子どもの将来を考えなさい。この子が普通の人生を送れることはないだろう』と。その言葉を聞いたとき、私は神に怒りを感じました。どうして私たちなのかと自問しました。自責の念と苦しみ、そして未来への不安でいっぱいでした」
夫婦は共働きで、障害のある子どもを育てることがどれほど大変かを理解していた。それでも、2人は出産を決意し、2022年6月、マリアンは息子のアンドレ(Hendre)を無事に出産した。
マリアンはその決断が正しかったと確信するまでに時間がかかったと明かしている。
「涙が出るほど美しい瞬間もたくさんありました。でもその後、深い悲しみと絶望に襲われました。『なぜ私たちの子どもなのか』と何度も思いました。毎日、健康な子どもが生まれるように祈っていたのに、現実はそうならなかった。それでも、もしもう一度あの時に戻って選び直すことになったとしても、私は迷わずこの子を産むと答えるでしょう。腕がなくても、私のかけがえのないわが子です」と、マリアンは語った。
残念ながら、マリアンとヘンドリックの息子アンドレは腕がないだけでなく、いくつかの合併症も抱えて生まれた。
両足は内側に曲がっており、ギプスで固定する必要があったほか、脛骨が欠如していた。また、胃の発達も不十分で、一度に摂れる母乳の量はわずか30ml程度に限られていた。
アンドレには継続的なケアが必要だったため、週に2日は叔母の家で、残りの2日はマリアンの母親(アンドレの祖母)のもとで過ごす生活が続いていた。

夫婦はアンドレの将来を不安に感じていたが、生後3か月で寝返りができるようになり、自分で少しずつ動けるようになった。
マリアンは「アンドレが3か月のとき、自分の力で転がって移動する方法を覚えたんです。その瞬間、心にかかっていた重たい雲が一気に晴れたように感じました」と語った。
さらに、「この子はきっと大丈夫だと気づいたとき、私自身も前を向けるようになりました。鬱のような気持ちはすっかり消えました」と話した。
父親のヘンドリックは、「子どもが部屋の反対側にあるおもちゃを取ろうとすると、自分で動いたり、小さな足で引っ張って持ってくるんです」と笑顔で語った。
夫婦は、アンドレが成長し適切な年齢になるのを待ってから、義手となる人工腕を作る計画を立てている。
また、「アンドレは私たちにとってかけがえのない贈り物です」と語り、社会が決めた「普通」の基準にとらわれず、自分たちらしく生きていく大切さを伝えたいと強調した。
夫婦の選択に対するネットの反応は賛否が分かれた

しかし、ネット上では夫婦の選択に対する意見が大きく分かれている。「医師の助言を受け入れるべきだった」とする意見と、「子どもの命を選んでよかった」とする声が対立している。
医師の助言を聞くべきだったとするネットユーザーは「先天性障害を持つ子どもは中絶の正当性を示す最も明確な例だ。障害を抱えて生まれた子どもは、将来まともに働くことが難しく、国の援助がなければ生活もままならないだろう」、「障害があると分かっていながら出産するのは、子どもにとってあまりに酷だ」、「親のエゴが子どもに一生の苦しみを与えることになりかねない」といった声が上がり、子どもの将来に対する懸念が多く寄せられている。
一方、夫婦の選択を支持するネットユーザーからは「人間には適応力があり、困難を乗り越える力を持っている。障害を持ちながらも、自分の人生をしっかりと生きている人はたくさんいる」、「命を奪うのではなく、可能性を信じて出産した決断は素晴らしい」「現代は義手や義足の技術も高度に進化している。腕がないという理由で出産を諦めるのは、もはや正しい判断とは言えない」といった声もあり、夫婦の勇気ある選択に共感が集まっている。