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2025年04月01日火曜日
ホームトレンド窓の外の緑が鎮痛剤代わりに? 自然風景が痛みを和らげる脳内メカニズムを研究チームが解明 VR自然療法の医療応用に期待

窓の外の緑が鎮痛剤代わりに? 自然風景が痛みを和らげる脳内メカニズムを研究チームが解明 VR自然療法の医療応用に期待

引用:Getty Images
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自然の風景が痛みの緩和に及ぼす好影響が、科学的に証明された。

40年前、アメリカの環境心理学者ロジャー・ウルリッヒ博士は、病院の患者が窓越しに緑地を見ると鎮痛剤の使用が減り、回復が早まるという研究結果を発表した。しかし、この効果の根本的なメカニズムは、長らく解明されていなかった。そこで、イギリスのエクセター大学とオーストラリアのウィーン大学の研究チームは、都市と自然の風景を見た際の、痛みと脳活動の違いを調査する研究を実施した。

研究チームはオーストリアの成人49名を対象に、都市や室内オフィスの映像と、自然の風景を映した映像を見せながら、電気ショックで痛みを与え、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)で脳活動を観察した。

その結果、参加者は都市や室内オフィスの映像よりも、自然の映像を見ている時の方が痛みを感じにくいことが判明した。

脳スキャンでも、痛みの処理に関連する特定の脳反応に変化が見られた。

最新の機械学習技術を用いた分析の結果、仮想的な自然風景を視聴する際、痛みを感じる時に脳へ伝達される原始感覚信号が減少することが明らかになった。

研究チームは、この結果がウルリッヒ博士の研究で、緑地を見た患者の痛みが軽減された理由を強く裏付けるものだと述べた。また、仮想の自然風景でも実際の自然と同じく痛み緩和効果が得られることが示され、これは非薬物治療において重要な意味を持つと強調した。

論文の著者であるウィーン大学のマックス・シュタイニンガー研究員は「この研究は、単に自然が健康に良いというのが『プラシーボ』効果ではなく、実際に脳が痛みの情報に対する反応を抑制するからという証拠を提供している」と述べた。

引用:Getty Images
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さらに彼は「今後、自然体験などの代替療法が痛みの管理改善に役立つことを期待している」と付け加えた。

共同著者であるイギリス・エクセター大学のアレックス・スマリー博士も「容易に適用できる仮想自然体験でも痛み緩和効果が得られるという事実は、非薬物治療において重要かつ実用的な意味を持つ」と述べ、「今回の研究は、自然が心に与える影響をより深く理解するための新たな研究の道を開いてくれた」と語った。この研究結果は、科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)』に最近掲載された。

この研究は、今後の医療および心理療法分野に新たな可能性を提示し、さらなる後続研究が期待される。

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