
アラスカで一家3人が奇跡的に生還した。小型機が氷結した湖に墜落したものの、家族は機体の翼の上で身を寄せ合い、12時間にわたって救助を待ち続けたという。
25日、AP通信やABCニュースが報じたところによると、アラスカ州兵は24日午前10時30分、トゥストゥメナ湖で漂流していた一家3人を無事に救出した。操縦士である父親と、彼の小学生・中学生の娘2人の3人は軽傷を負ったものの、命に別状はなく、病院に搬送された。墜落したのは「パイパーPA-12スーパークルーザー」という小型機で、23日にはアラスカ州ソルドトナ空港を離陸し、ケナイ半島のスキラック湖周辺を遊覧飛行する予定だった。
しかし、23日午後10時30分の到着予定時刻を過ぎても連絡が途絶え、行方不明となった。操縦士の携帯電話の最後の通信は、同日午後5時頃にトゥストゥメナ湖周辺で確認されていた。すぐに米沿岸警備隊やアラスカ州警察、州兵が捜索を開始したが、非常用位置指示送信機(ELT)の信号は検出されなかった。
行方不明から約12時間後の24日朝、一人の市民がトゥストゥメナ湖東岸で機体の残骸を発見し、通報した。小型機は湖の氷上に墜落し、一部が水没していたが、完全に沈んではいなかった。その上で、家族は救助を待ち続けていた。寒さと疲労に耐えながら、機体の翼の上で12時間を過ごしたという。
捜索に参加したパイロットのデイル・アイハー氏は「無線で生存者発見の知らせを受けたとき、正直信じられなかった」と振り返る。「湖上に生存者を確認したとき、奇跡が起きたと感じた」と語った。
米国家運輸安全委員会(NTSB)は墜落の原因を調査するため、操縦士への聞き取りや機体の回収を進める方針だ。
トゥストゥメナ湖はケナイ半島最大の淡水湖で、アンカレジから南西約130kmに位置している。周囲は山岳や氷河に囲まれ、この地域では道路網が整備されておらず、多くの住民が移動手段として小型機に依存している。しかし、地元住民によると、この湖の周辺では突発的な強風が発生しやすく、航空機や船舶の運航には常にリスクが伴うという。アンカレジ国立気象局の専門家は「この地形が風の流れを複雑にし、予測しにくい気象条件を生み出している」と指摘している。