アルコール依存症治療のため体内に「チップ」を埋め込んだ中国人女性

断酒のため体内にチップを埋め込んだ中国人女性の近況が話題を呼んでいる。
9日(現地時間)、香港メディア「星洲日報(Sinchew Daily)」は、アルコール依存症の治療用チップを体内に埋め込んだ40代女性Aさんの近況を伝えた。
中国・四川省成都市に住むAさんは、アルコール依存症により家族との関係が悪化し、悩んでいたという。
Aさんは、「16年間飲酒を続けてきました。仕事や付き合いで飲まざるを得ず、毎日1〜3kgの白酒を飲む習慣がついてしまいました」と明かした。
彼女も断酒を望み、何度も試みたが、そのたびに離脱症状に苦しみ、断念せざるを得なかった。
「酒を断つと手が激しく震え、体調も悪くなりました。そのため断酒できませんでした」と語った。
16年間の飲酒によって何度も事故に遭い、経済的損失を被り、家族との軋轢も続いていたという。
飲酒問題による出費は、なんと100万元(約2,010万3,821円)に上ったという。
悩んでいたAさんは昨年11月、本格的に断酒を決意し、成都第四病院で治療を受けた。
各検査の結果、病院はAさんに、「アルコール依存症治療チップ」の埋め込み手術を提案した。手術は約5分で完了する簡単なものだった。
この手術法は、中国国際麻薬統制局の元副局長であるウェイ・ハオ氏が率いる研究チームによって開発されたもので、アルコールへの欲求と抑えるチップを体内に埋め込む治療法だ。
このチップを体内に埋め込むと、「ナルトレキソン」という物質が放出される。
ナルトレキソンは依存症治療に広く使用される成分で、もともとはオピオイド依存症の治療に用いられていた。しかし、その後アルコール使用障害にも効果があることが判明し、現在はアルコール依存症治療にも活用されている。日本では「ノディクト(レビアジェネリック)」という名称で販売されている。
このナルトレキソンの効果により、アルコールの味がまるで水のように感じられるようになる。酒の香りを嗅いで実際に飲んでも味を感じず、水を飲んでいるような感覚になるという。
埋め込まれたチップは最長5か月間、効果が持続するとされている。
効果を実感…「酒を飲みたいと思わなくなった」
手術から2か月以上が経過したAさんは、このチップの効果を実感している。
彼女は、「アルコールへの渇望が大幅に減り、ほぼ断酒できています」と言い、「今では酒を見ても、まるで清水のように感じ、全く飲みたいと思いません」と語った。
成都第四病院側は、「手術時に患者の腹部を1〜2cm程度切開し、5〜10分ほどで完了します。埋め込み後、薬剤は約150日間にわたり、体内で持続的かつ安定的に放出されます」と説明した。
同病院の依存症医療センターのヤン・グオジェン院長は、「アルコール断酒チップは、多くのアルコール依存症患者に適していますが、患者個人との相性が重要です。そのため、病院で詳しい説明を受け、医師の指導のもとで専門的かつ総合的な検査を受ける必要があります」と強調した。