精子形成幹細胞移植、不妊治療に新たな道を開く
アメリカ・コロンビア大学不妊センターの医療チームが、世界初となる精子形成幹細胞の移植を成功させた。
この施術は20代前半の男性患者に行われた。患者は骨がんの治療のため化学療法を受ける前に、自身の精子形成幹細胞を冷凍保存していた。

これらの幹細胞は思春期を迎えるとテストステロン値の上昇とともに精子を生成し始める。しかし、化学療法はこの細胞を損傷させ、不妊を引き起こす可能性がある。
若年患者が将来の生殖能力を保存するため精子形成幹細胞を保存したい場合、超音波ガイド下で針を用いて精巣網からこれを採取できる。
陰嚢基部に針を挿入し慎重に採取した後、凍結保存を行う。必要時には同じ超音波ガイド下技術で保存した幹細胞を精巣に再注入できる。
現在まで医療チームは、移植過程で患者の精巣組織に損傷がなく、ホルモン値も正常であることを確認した。しかし、精液分析ではまだ精子は確認されていない。これは移植された細胞数が少なく、十分な精子を生成できていないためであると推測される。
コロンビア大学不妊センターのローラ・ゲメル博士は「精子追跡・回収システムを用いた実験で成功的な結果を得た」と述べた。
ゲメル博士は人工知能、ロボット工学、微小流体力学技術を組み合わせて精子の回収に成功したと説明した。こうした技術の進歩により、体外受精などを通じた出産の可能性が高まると期待されている。
この研究は医学・臨床関連の未発表論文アーカイブ「medRxiv」に「Ultrasound-Guided Rete Testis Approach to Sperm Aspiration and Spermatogonial Stem Cell Transplantation in Patients with Azoospermia」というタイトルで掲載された。
これは不妊治療分野における画期的な進展を示すケースとして評価されている。