「これも動物虐待」…髪を編み、服を着せた赤ちゃんオランウータンで中国動物園に批判

中国・河南省の動物園が、生後8か月のメスのオランウータンに少女のような服装と髪型を施し、来園者が直接触れ合えるプログラムを実施したことで、「動物虐待ではないか」との批判が高まっている。
13日付の香港メディア「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)」によると、物議を醸しているのは河南省沁陽市にある和生森林動物園だ。ここでは「チーシー」と名付けられた生後8か月のメスのオランウータンが、来園者に公開されていた。
動物園側はチーシーに子ども用の洋服を着せ、髪を編んで、まるで人間の少女のような姿に装い、展示していた。中国のSNS上には、チーシーがベビーベッドに座り、おもちゃを口にくわえる様子が多数投稿された。訪問者はチーシーと握手をしたり、抱きかかえて写真撮影をしたりした。
同園の飼育員は「寒さ対策のために服を着せたもので、見た目がかわいくなるように髪を編んだ」と説明した。「毛が目を覆うほど長かったので実用的な面もある」とし、来園者と触れ合う際には消毒薬を使用しており、定期的に日光浴もさせているという。また、「2日に1度は入浴もさせており、しっかりケアしている」と強調した。
しかし、世界動物保護協会(WAP)中国支部の動物学者スン・チュエンフイ氏は、こうした展示方法に懸念を示している。
スン氏は「オランウータンは体毛が密であるため、服を着せることが体温調節の妨げになる恐れがある」と指摘した。「さらに、オランウータンは群れで生活する動物であり、1頭だけで生活させることは精神的ストレスにつながる」と述べた。
また、「動物の本来の欲求を尊重し、自然に近い環境を整えることが動物園の責務だ」とした上で、「服を着せたり髪を編んだり、頻繁に人間に触れさせたりするのは、動物の福祉を無視しており、動物が単なる娯楽の対象にすぎないという誤解を生む恐れがある」と批判した。
なお、オランウータンは国際自然保護連合(IUCN)が指定するレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)の中で、絶滅の可能性が最も高い「近絶滅種(CR)」に分類されている。