最近、ダイバーたちの間で注目を集めている魚がいる。特徴的な外見もさることながら、時間の経過とともに自ら性別を変えるという驚くべき生態が話題になっている。
その魚の正体は「リボンウナギ」だ。鮮やかな見た目と珍しい生態から「神秘の魚」とも称され、特にフィリピンをはじめとする東南アジアの海域でよく見られる。
リボンウナギはチンアナゴ科に属し、インド太平洋全域に広く分布している。韓国をはじめ、東アフリカ、日本南部、オーストラリア、フランス領ポリネシアなど、さまざまな海域に生息しており、主にサンゴ礁や潟湖の砂底に穴を掘って暮らす。水深の浅いところから60メートルほどの深さまで見られ、昼間に活動して小魚や甲殻類を捕食する。細長く蛇のような体に鮮やかな背びれ、おうぎのように広がった鼻孔、顎の下の突起が特徴で、全長は最大130センチに達する。
しかし、リボンウナギの最大の魅力は、体の色を通じて表れるその生涯にある。幼魚の時期は体全体が黒く、背びれだけが黄色いのが特徴だ。体長が約65センチを超えると成熟したオスへと成長し、濃い青色の体に黄色い顔とひれを持つようになる。そして、一定の時期を迎えると、オスだったリボンウナギは自ら性転換を行い、メスへと変化する。このとき体の色は鮮やかな黄色へと変わり、性転換が完了すると繁殖を始める。
この「性転換」は一方向性で、オスからメスへと変化する。これはベラやブダイのようにメスからオスへ変わる魚とは逆のパターンであり、性転換は短期間で行われる。ただし、メスとして過ごす期間は平均で約1か月と非常に短いため、メスのリボンウナギを目にする機会はほとんどない。メスになる時点では体長が通常95センチ以上に成長しており、完全に成熟した個体だけが繁殖を担う。
リボンウナギは母系を中心とした群れを形成しており、遺伝的多様性と生存率を高めるために、性転換という進化戦略を採用してきたと考えられている。彼らは色を識別できない色盲であるため、体色の変化が交尾のサインとして機能することはない。代わりに、オスが本能的に自ら性転換することで、生殖サイクルを維持している。興味深いことに、成熟したオス2匹が同じ穴で共生する例も報告されており、これは性転換のタイミングを調整したり、群れ内での役割を分担する行動として解釈されている。
リボンウナギは食用には向いていない。ウナギ類の中には血液に毒性を持つ種類もあり、生食によって健康被害を引き起こす可能性がある。リボンウナギに毒性があるかどうかは明らかになっていないが、独特な外見と飼育の難しさから、食用ではなく観賞用や研究対象としての価値が高いとされている。特に、水族館に移送された場合でも、1か月以内に死んでしまう事例が多く、ペットとしての飼育にも適していない。
一方、自然環境では20年以上生きることができる長寿の魚であり、リボンウナギは海洋生態系の食物連鎖の中間に位置し、全体のバランス維持に重要な役割を果たしている。サンゴ礁環境に生息するリボンウナギは、その存在自体に高い生態的価値があり、保護対象の海洋生物として分類されている。
リボンウナギは、その華麗な外見と珍しい生態、自ら性を変えるという独特な生涯サイクルによって、ダイバーたちの間で「一度は見たい生物」として高く評価されている。
特に、わずかな期間しか見ることができないメスの姿は極めて稀少で、一度でも出会った者に強烈な印象を残す。自らの体と役割を変化させながら、生存と繁殖を続けるリボンウナギは、海中の生物多様性の象徴とも言える存在であり、人間の想像を超えた方法で進化を続けてきた、自然のもう一つの可能性を示している。