若い女性が電車内で倒れた際、同乗していた男性たちが見て見ぬふりで、心臓マッサージなどの心肺蘇生法を行わなかったことを批判する投稿が、韓国で深刻化する男女分断社会を浮き彫りにした。
最近、韓国の大学生が集まるオンラインコミュニティ「エブリタイム」の江原(カンウォン)大学・春川(チュンチョン)キャンパス掲示板に投稿された「韓国の男たちは本当に情けない」というタイトルの記事をめぐり男女間で激しい舌戦が起きている。
先月17日、ある学生が「今日の午前10時頃、清涼里(チョンニャンニ)方面の1号線で20代と見られる女性が倒れたが、同年代の男性たちはまったく気にとめず、知らんぷりをしていた。その光景を見ていて虫唾が走った。軍隊で心肺蘇生法を学んだはずなのに、これでは『軍カンス』に行ったというほうが正しい」と投稿した。
投稿者が言及した「軍カンス」という単語は過激化したフェミニストの間で使われている「軍隊」と「バカンス」を合わせた新語で、軍服務中の男性や除隊した男性に対し、侮蔑する意味で使用される言葉である。
該当の投稿を見た「エブリタイム」の男性ユーザーたちは「なぜ、男がしなければならないのか」、「救助したとしても、そのまま警察署に行くことになるだろう」、「むしろ賢い男たちだ」、「自業自得だ」などの反応を示し、倒れた女性を助けない理由として、性犯罪に巻き込まれることを懸念するからだと反論した。
当然、心肺蘇生法の手順にある身体接触では強制わいせつ罪は成立しない。わいせつな意図をもって相手の身体に接触しなければ強制わいせつ罪は成立しないためである。実際に韓国で過去に心肺蘇生法を施したことで強制わいせつと認められた判例は存在しないといわれている。
しかし、心肺蘇生法など救助活動で体が触れた際に強制わいせつなどの性犯罪で訴えられるかもしれないという恐れが一部の男性の間で共有されているのは事実である。
実際、2014年頃、救急隊員が強制わいせつの疑いで裁判を受けたことがある。搬送患者が救急車の中で救急隊員が自分にわいせつ行為をはたらいたと主張したからだ。
法務法人「大建」は、「意識を失っている女子学生に対し、両親の同意の下で心肺蘇生法を行ったにもかかわらず、強制わいせつで訴えられた事例が実際にあった」としながらも、「しかし、応急処置を施して強制わいせつで訴えられたとしても、判例をよく調べてみると、強制わいせつに該当することはない。また、もし、応急措置を行う過程で肋骨が折れるなどの身体的な損傷を与えたとしても、『善きサマリア人法』により処罰されない」とブログで説明したことがある。
「善きサマリア人法」とは、事故で怪我をしたり、急病になったりした人を善意で助けた者に対し、法的な保護を与えるもので、原則として損害賠償責任を負わせないものである。
一方、記事を見た一部のネットユーザーは、投稿者になぜ投稿者自ら心肺蘇生法を行わなかったのかと尋ねた。すると、投稿者は「心肺蘇生法を施すのに女性の力と男性の力が同じだと思うのか、お願いだから考えてから言え」と答えた。