2023年世界選手権の性別適格性検査で「XY染色体」を持っていることにより不合格となり、出場権を剥奪された2人の選手の出場が認められたことで論争が起きているパリオリンピックのボクシング女子で、実際に該当の選手の試合が行われ、相手選手は試合開始46秒で生命の危険を感じ棄権した。
1日(現地時間)、パリ北アリーナで行われたボクシング女子66㎏級の2回戦ではイタリア代表のアンジェラ・カリニが棄権し、アルジェリア代表のイマネ・カリフが準々決勝に進出した。
カリフと台湾代表のリン・ユーティンは昨年の世界選手権で国際ボクシング協会から失格処分を受けた。2人の選手は性別適格性検査で男性の性染色体「XY染色体(*)」を持っていることが明らかになり、女子ボクシング競技への出場が許可されなかったからだ。*女性を示す性染色体の組み合わせは「XX染色体」
しかし、国際ボクシング協会は2016年リオデジャネイロ大会での審判の不正問題や元会長の反社会的組織との関与などを理由に、国際オリンピック委員会からオリンピック競技を管理する権利をはく奪されたため、パリ大会では国際オリンピック委員会傘下のボクシングユニットが競技運営を管理している。
国際オリンピック委員会はカリフの勝利により波紋が広がっていることを受け、「すべての選手は参加資格と参加規程、大会運営を管理するパリ2024ボクシングユニットが定めたすべての医療規定を遵守している。過去と同様に、選手の性別と年齢はパスポートに基づいて決定される」とし、2人の選手の出場に問題はないと声明を発表した。
イタリア国内では、試合前から政治界までがカリフの出場を問題視していた。
スポーツ・青少年担当相のアンドレア・アボーディは「スポーツ選手にとって最高の舞台であるオリンピックでは、選手の安全はもちろんだが、公正公平な競技が保証されていなければならない。しかし、カリニはそうではない」と懸念を示していた。
さらに、ジョルジャ・メローニ首相も「男性の性染色体を持つ選手が女性の大会に出場するべきではないと思う」と述べた。
イタリア国民が懸念した通り、カリニには安全で公正公平な舞台は準備されていなかった。
試合開始から間もなく、カリフのパンチを顔に浴びたカリニは自らコーナーに戻り、ヘッドギアを元の位置に戻したが、涙を流しながらすぐに棄権を宣言し、わずか46秒でリングを去ることになった。
カリニはロイター通信に対し、「祖国のために常にすべてをかけてきた。しかし、今回はもう戦えないと思い、試合を諦めた。一発のパンチでも鼻に強い痛みを感じ、自分の命を守らなければならないと、これ以上はできないと悟った」と語った。