冬の運転者の悩み
ワイパーを立てること
安易な判断は禁物
冬季に車のオーナーが直面する悩みの一つがワイパーの問題だ。降雪予報が出ると、多くの車のオーナーが頭を悩ませることになる。駐車中の車のワイパーをそのままにしておくと凍結してしまうのではないかと心配になり、立てるべきか、それともそのままにしておくべきか判断に迷うことが多い。
ワイパーは、ゴムがフロントガラスに密着して水滴を拭き取るという、きわめてシンプルな原理で働く装置だ。しかし、その役割は決して軽視できない。雨や雪が降って運転者の視界が悪くなるとき、安全確保の要となるからだ。このように重要な役割を担うワイパーだが、冬の降雪時には必ず立てておく必要があるのだろうか。
意外に長い歴史を持つ
自動車用ワイパーの歩み
まず、ワイパーについてより詳しく見ていこう。ワイパーの歴史は意外に古い。その始まりは1903年にさかのぼる。ワイパーは、当時活躍していたアメリカの女性実業家、メアリー・アンダーソンによって発明された。ニューヨークの厳しい冬の中、視界を確保できない運転者を目にした彼女が、フロントガラスにゴムブレードを密着させる装置を考案したのだ。これが現代のワイパーの原型となった。
1910年代には、アメリカのトリコ社が手動式ワイパーを開発し、実用化に成功した。その12年後の1922年、世界で初めてキャデラック車に手動式ワイパーが標準装備されることになり、ワイパーは自動車産業において重要な地位を確立した。
現在も主流の
電動式ワイパーの登場
今日一般的な電動式ワイパーは、1926年にドイツのボッシュ社によって開発された。この当時の電動式ワイパーは、エンジンモーターの回転力をワイパーの往復運動に変換する構造を持っており、これが現在のワイパーシステムの基本となっている。もちろん、当初は課題も存在した。
従来の振動式ワイパーは、エンジンの影響を大きく受けざるを得なかった。そのため、エンジンの回転数によって作動速度が変わったり、停止したりする問題が頻発していた。その後、これらの欠点を一つずつ改善し、より安定した一定の動作を実現していった。
では冬季のワイパー、
むやみに立てる必要はあるのか
電動式ワイパーは、モーター、リンクアーム、ワイパーアームが連動してフロントガラスにゴムブレードを密着させる構造を持つ。この基本的な仕組みは100年間変わっておらず、現在も広く採用されている。ワイパーのシンプルで効率的な構造が、他の代替技術の台頭を阻んできた要因でもある。
自動車と運転者の安全を守る不可欠な装置として定着したワイパー。冬季の雪予報時に立てておくべきなのだろうか。検討すべき点は、予想される降雪量と風の強さだ。予想される降雪量が少ない場合は、ワイパーをそのまま倒しておいても問題ない。逆に雪の量が多い場合は、雪の重みでワイパーに負担がかかる可能性があるため、立てておく方が無難だ。また、強風が予想される場合は、立てたワイパーが風で破損する恐れがある。この場合、雪の量に関係なくワイパーを倒しておく方が賢明だ。