ドナルド・トランプ次期米大統領が最大7,500ドル(約113万円)の電気自動車(EV)税額控除を廃止すると公言している一方、米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は「我が州はEV購入支援を継続する」と約束した。ただし、小規模のEVメーカーの成長を奨励するため、大企業を支援対象から除外する案も検討されており、テスラは除外される可能性が高い。民主党の次期大統領候補として注目されるニューサム知事が、トランプ次期大統領とテスラのCEOイーロン・マスク氏に対する攻勢を早くも開始したのではないかとの見方も出ている。
ニューサム知事は25日(現地時間)、声明を発表し、トランプ政権第2期が連邦レベルのEV税額控除を撤回する場合に備え、カリフォルニア州が独自にEV購入支援プログラムを設立すると明らかにした。「我々はクリーンな交通の未来を後退させない」とし、「環境に優しい車両の運転をより手頃な価格にする」と述べた。
ニューサム知事は具体的に、過去にカリフォルニア州で実施されていた環境対応車の還付制度の復活を提案した。カリフォルニア州は2010年から2023年まで、EV1台当たり最大7,500ドル(約113万円)を支援する還付制度を運営してきた。これまでに総額14億9,000万ドル(約2,260億円)の予算を投じ、59万4,000台のEV購入を支援してきた。これにより温室効果ガス390万トンと微小粒子状物質195トンを削減できたと主張している。ただし、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、知事の決定だけでは還付制度を再開できず、州議会の同意が必要だと指摘した。
また、知事の提案にはテスラのような大企業を除外する要素が含まれる見込みだ。ニューサム知事の報道官は「新興EVメーカーの成長を奨励する試み」と説明した。カリフォルニアに基盤を置いた世界最大のEV企業テスラのマスクCEOは即座に反発した。自身のXアカウントで「テスラがカリフォルニアでEVを生産する唯一の会社だ」とし、「これは狂気の沙汰だ」と投稿した。
ニューサム知事の動きは、トランプ次期大統領とマスク氏双方を標的にしたものと解釈されている。カリフォルニア州は民主党の畑の一つであり、ニューサム知事はトランプ次期大統領の環境、移民関連の保守政策を州に強制できないよう、最も早く反発した人物の一人だ。ニューサム知事は今回の大統領選でも、ジョー・バイデン大統領が高齢を理由に再選を断念した場合の代替候補として最初に名前が挙がるなど、民主党の次期大統領候補として長い間注目を集めている。
ニューサム知事はマスク氏とも何度も衝突してきた。フィナンシャル・タイムズ(FT)は、マスク氏がカリフォルニア州の新型コロナウイルス対策などに不満を抱き、テスラの本社をカリフォルニアからテキサス州オースティンに移転したと指摘している。