アメリカのトランプ次期大統領は、就任前から「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」政策を推進している。大統領選挙中に強調した規制緩和や関税強化を通じた自国優先主義の公約を再提示し、就任直後に実行に移すと公言している。
一方、任期をひと月ほど残したバイデン米大統領は、「普遍的関税」の導入など第2次トランプ政権が推進する政策について、厳しく批判した。
トランプ次期大統領は現地時間10日、Truth Social(トゥルース・ソーシャル)で「個人や企業が米国に10億ドル(約1,529億円)以上を投資すれば、許認可を迅速に受けられる」と述べた。さらに、「これにはすべての環境許可が含まれるが、決して環境分野にのみ限定されるわけではない」と付け加えた。
トランプ次期大統領からはこの日、自らの提案について具体的な説明はなかったが、選挙期間中に米国の石油・ガス資源開発のために不要な環境規制を撤廃する意向を繰り返し表明してきた。トランプ次期大統領の発言は、2期目の政権が規制緩和などの措置を通じて米国主導の経済・産業構造をさらに強化するという公約の一環であると解釈されている。
さらに、トランプ次期大統領は、当選後初めてのメディアインタビューで、「関税が我々(米国)を豊かにする」と述べ、輸入国に対する普遍的関税導入に関する従来の立場を表した。
トランプ次期大統領が来月の就任を控え、経済政策導入に関する追加の立場を次々と発表している中、バイデン大統領は第2期トランプ政権が導入を検討している普遍関税などについて「重大な誤りとなるだろう」と指摘した。
バイデン大統領はこの日、ワシントンDCのシンクタンク・ブルッキングス研究所で自らの経済実績を総括する演説を行い、「彼(トランプ次期大統領)は『関税のコストを米国の消費者ではなく外国が負担する』という誤った信念のもと、普遍的関税を米国に入るすべての輸入品に課す決意のようだ」と述べ、「そのようなアプローチは大きな誤りだと確信している」と強調した。
トランプ次期大統領は選挙運動期間中に10~20%の普遍的関税と、中国に対する60%以上の高率関税の適用を公約した。また、先月25日には米国への麻薬類の持ち込みや不法移民問題に対する不満を表明し、3大輸入国である中国、メキシコ、カナダに追加で関税を課す意向を示した。
そして、バイデン大統領は「私は神に、トランプ次期大統領が『プロジェクト2025』を廃止するようにと祈っている」と述べ、「私の考えでは、それは我々とこの地域に経済的災害をもたらすだろう」と批判の声を強めた。
プロジェクト2025は、第1期トランプ政権の高官が多数参加し作成された政策提言集であり、環境保護局(EPA)権限の縮小や不法移民者への対応などに関して超強硬的な態度を示している。
さらにバイデン大統領は、自らの在任期間中に米国の製造業の基盤を再建するための重要な立法成果として挙げているインフレ抑制法(IRA)や半導体法などが、トランプ次期大統領の就任後に廃止される可能性について懸念を示した。
バイデン大統領は「我々が(IRAなどに基づいて)行った歴史的投資は、民主党支持の州よりも共和党支持の州により多く行われた」とし、「地域住民のための雇用を創出するノースカロライナ州の電気自動車バッテリー工場や、ジョージア州の太陽光発電工場を閉鎖しないでほしい」とトランプ次期大統領に訴えた。
一方、ジャネット・イエレン米財務長官もこの日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のサミットイベントに参加し、関税が「米国の消費者に対して価格を大幅に引き上げ、企業へのコスト圧力をもたらす」とし、「インフレで得た進展を後退させ、成長に否定的な結果をもたらす恐れのある戦略だ」と指摘した。イエレン長官の後任には、ウォール街出身のヘッジファンドのキー・スクエア・グループ、スコット・ベッセント最高経営責任者(CEO)が指名されている。