アサド政権を打倒し、シリア暫定政府を主導する旧反体制派の主力組織「シャーム解放機構」の指導者アハマド・シャラア(通称ジャウラニ)氏は、シリアで総選挙を実施するまでには最長4年かかる可能性があると述べた。
29日(現地時間)「ロイター通信」によると、シャラア氏はアラビア語放送局「アル=アラビーヤ」とのインタビューで「国民が社会の劇的な変化を目にするのには1年、新憲法制定には最長3年かかる可能性があるだろう」と明らかにした。
暫定政府が今後の政治日程に言及したのは今回が初めてである。
シャラア氏はロシアやアメリカとの関係についても言及し、それぞれに融和的なメッセージを発した。
アサド政権を長年支援してきたロシアだが、「(ロシアとは)戦略的利益を共有している」とし、「シリアとロシアの互恵関係は継続していくべきだ」と述べ、アサド政権に続いて両国関係を重視する方針を示唆した。
この発言に関連し、ロシアのラブロフ外相は同日、ロシアの通信社「RIAノーボスチ」とのインタビューで、ロシアのが使用権を持つタルトス軍港やヘメイミーム空軍基地の権利が新政府との交渉対象になるだろう」と語った。
さらに「我々の拠点の維持だけでなく、今後の運営や維持、条件、現地との連携などに関する課題でもある」と強調した。
タルトス軍港はロシアにとっても唯一の地中海への海路にあたる要衝だ。
シャラア氏は「アメリカのトランプ次期大統領がアメリカがシリアに科している制裁を解除することを望んでいる」とも言及した。
20日、中東問題などを担当するリーフ国務次官補など3名のアメリカ政府高官がシリアを訪れ、シャラア氏と会談した後、彼にかけられていた最大1,000万ドル(約16億円)の懸賞金を解除することを決めた。
西側諸国はアサド政権の崩壊を歓迎しつつも、「シャーム解放機構」の前身「アル=ヌスラ戦線」が、テロ組織「アルカイダ」傘下の団体であったことから現在もなお警戒している。
実際、アメリカと欧州連合は「シャーム解放機構」をテロ組織に指定している。
ただし、「シャーム解放機構」は2016年以降、アルカイダと決別し、以降も占領地での女性のヒジャブ着用や禁煙を強要せず、異なる宗派間の共存が可能であることを強調するなど、穏健派勢力としての立場を確立するために努力を重ねてきた。