昨年、エヌビディアは171%の急騰を記録し、ウォール街での人工知能(AI)関連株ラリーを牽引した。しかし、今年は多くの課題に直面しており、株価上昇が鈍化する見通しだ。一方、「第二のエヌビディア」とも称されるブロードコムが急成長を遂げており、主要顧客は自社半導体開発に注力している。特に競合のAMDとブロードコムは、エヌビディアの市場シェア(90%以上と推定)の侵食が予想される。
ブロードコムは新たに開発したAI専用チップを市場に投入し、エヌビディアのシェアを大きく奪うと見られている。エヌビディアはグラフィックス処理装置(GPU)を中心に市場を主導してきたが、ブロードコムはAIディープラーニングに最適化された拡張型処理ユニット(XPU)という新チップを投入することで、競争を激化させている。
このチップは、並列計算に特化したGPUとは異なり、低消費電力で高効率を実現する構造で設計されており、これまでAI専用チップ市場を支配してきたエヌビディアに対して、真の対抗馬が登場したと言えるだろう。加えて、エヌビディアの大口顧客も同社への依存度を減らすため、自社半導体の開発を進めている。
具体的には、グーグルはブロードコム基盤のTPU(Tensor Processing Unit)、アマゾンは「Trainium 2」プロセッサ、マイクロソフトは「Maia 100」アクセラレーターをそれぞれ開発中だ。さらに、対中半導体規制が強化されており、中国での売上比率が高いエヌビディアにとって、これがさらなる逆風となる見通しだ。
一方、エヌビディアには好材料も存在する。今年から次世代AI専用チップ「Blackwell」の発売が本格化するためだ。
エヌビディアは、Blackwellの量産に苦心してきたが、設計上の問題などで発売が当初の予想より遅れたが、今年からは本格的な量産が見込まれている。これにより、エヌビディアの売上改善が期待される。同社は様々な課題に直面しているものの、その地位を直接脅かす企業はまだ現れておらず、当面はエヌビディアのラリーが続くとの見方もある。しかし、競争が激化する中で、以前ほどAI専用チップ市場を独占することは難しいとの見方が多く、株価への影響が予想される。