米大統領選で民主党候補であるハリス副大統領の集会に参加するなど、反旗を翻してトランプ次期大統領を強く批判し、共和党を離党した元下院議員のリズ・チェイニー氏にバイデン大統領が「大統領市民勲章」を授与すると発表した。
2日(現地時間)「ワシントン・ポスト」はホワイトハウスが発表した大統領市民勲章者20名のリストにチェイニー氏が含まれていると報じた。
大統領市民勲章はアメリカ政府が文民に与える2番目に高位の勲章で、ホワイトハウスによると「国家または同胞のために模範的な活動を行ったアメリカ市民」に授与されるという。
「AFP通信」は、大統領市民勲章は大統領自身が掲げる大義のために闘った人々を称える機会だと説明した。
チェイニー氏は2021年1月6日に発生した議会襲撃事件に関する下院特別委員長を務めた。
大統領選では民主党のカマラ・ハリス候補を支持し、このことでトランプ氏から「(チェイニー氏の)顔に銃を向けてやろう」と脅迫めいた発言が飛び出したこともあった。
バイデン政権はトランプ氏が大統領に就任後、チェイニー氏に対する報復を行う可能性があると見て、予防策としての「恩赦」を検討していると伝えられている。
実際、トランプ氏はチェイニー氏をはじめとする議会襲撃事件を調査した特別委員会のメンバーに対して「刑務所に入るべきだ」と主張している。
大統領の権限を定義したアメリカ合衆国憲法第2章第2条には「大統領は弾劾の場合を除き、合衆国に対する犯罪について刑の執行停止または恩赦をする権限を有する」とあり、まだ起訴されていない人物も恩赦の対象となり得る。
しかし、アメリカでこれまで政治的報復を懸念して公職者が事前に恩赦された前例はなく、容疑がはっきりと成立していない人物を事前に恩赦することへの批判的な声も少なくない。
このような状況下で、バイデン大統領が大統領市民勲章は名誉勲章や恩赦などに比べて厳格な承認手続きが必要ないことに目をつけ、授与を決定したとみられている。
一方、リストにはチェイニー氏のほか、同性婚の合法化に尽力したメアリー・ボノート弁護士、「同性婚の父」とも呼ばれるエヴァン・ウォルフソン弁護士、バイデン大統領の長年のアドバイザーで友人のテッド・カウフマン元上院議員らが名を連ねている。