韓国のチェジュ航空機事故直前、機長と副操縦士がマニュアルをちぎり、事故回避に奔走していた状況が明らかになった。
3日(現地時刻)、MBNの報道によると、事故現場でボーイング737の運用マニュアルの一部が発見された。機体からの衝撃で飛び出たと推測される。このマニュアルは緊急時に操縦士が参照するQRH(Quick Reference Handbook)だ。2000ページに及ぶこの説明書は、各機体の操縦席脇、機長と副操縦士の手の届く場所に2冊ずつ備え付けられている。
事故機の周辺で発見されたマニュアルのページには、ボーイング737-800型機が着陸装置を展開した状態のまま、最小出力で飛行可能な距離や水上緊急着陸の手順などが記載されていた。これらのページには意図的に引き裂かれた形跡も残されていた。専門家らはこれを根拠に、機長がエンジン全停止の状況下でも機体を安全に着陸させようと必死に努力したと分析している。
新羅大学航空運航学科のコ・スンヒ教授は、機長が副操縦士に対し、どれだけ飛行を続けられるか、どう対応すべきかを確認するためにマニュアルを取り出した可能性が高いと指摘した。同学科のキム・グァンイル教授も、マニュアル全体を広げる時間的余裕がなかったため、必要な箇所のみをちぎり取って、迅速な判断を下したのではないかと推測している。
事故当時の切迫した状況は、事故直前に撮影された映像からも窺える。機長が最後まで操縦席で機体を制御しようと奮闘する姿が捉えられている。6,800時間以上の飛行経験を持つ空軍出身のベテランである彼は、同僚の間でも卓越した操縦技術の持ち主だと評価されていた。
ネットユーザーからは「最後まで操縦桿を離さなかったその責任感と、何としても乗客を救おうと必死にマニュアルを確認しようとしたその使命感に深い敬意を表する」といった声が寄せられている。
事故から6日目となるこの日、韓国南西部のムアン(務安)国際空港に集まった犠牲者の遺族らは、合同焼香所で犠牲者の冥福を祈り、再び涙ながらの一日を始めた。
当局の発表によると、この日の午前時点で犠牲者179人のうち42人の遺体引き渡し手続きが完了した。しかし、家族単位の犠牲者が多いため、遺族の大半は残りの遺体が引き渡されるまで空港に留まって待機を続けている。DNA鑑定により犠牲者の身元確認が順次進められており、今後も遺体の引き渡しが続く見通しだ。遺族らは少しでも原形を保った状態の遺体の引き渡しを望み、国立科学捜査研究院の鑑定結果を待っている。