パナマ運河の管理権を巡り、軍事力行使の可能性を示唆したドナルド・トランプ米国次期大統領に対し、パナマのホセ・ラウル・ムリーノ大統領が「当面は反応しない」姿勢を示した。
ホセ・ラウル・ムリーノ大統領は7日(現地時間)、パナマ運河返還に関するトランプ次期大統領の軍事力行使発言について、「(トランプ次期大統領が)20日に大統領に就任するまで反応しない」と述べたと、現地紙「ラ・エストレージャ・デ・パナマー」が報じた。国際法上、パナマの領土主権に争いの余地がないとの判断に基づくものとみられる。
ムリーノ大統領は先に記者会見とパナマ運河譲渡の25周年記念式典で、「パナマに運河を贈与した者はいない」、「我々が領土を金で買ったわけではない」、「1平方メートルたりとも譲れない」、「返還要求は、歴史的な無知の表れだ」などと述べ、トランプ次期大統領の威嚇的な発言に強く反発した。必要なら国際司法裁判所に米国を提訴する可能性も示唆していた。
トランプ次期大統領は同日、大統領選勝利後2回目となる記者会見を開き「パナマ運河は現在、彼ら(パナマ側)と協議中だ」とし、「彼ら(パナマ政府)は協定のあらゆる面で、そして道義的にも違反している」と主張した。さらに「中国がパナマ運河を運営している」と述べた。「パナマ運河とグリーンランドの管理権確保のために、軍事的または経済的な圧力を排除するか」との質問には「どちらの案件についても断言できない」と答えた。
トランプ次期大統領はまた、パナマ運河とグリーンランドが、米国の経済安全保障と国家安全保障にとって重要だと指摘した。また「(経済的・軍事的な圧力の不使用を)約束しない」と明言し、パナマ運河の管理権確保に向けて、軍事力行使の可能性を排除しなかった。
皮肉にも、ムリーノ大統領はこの日、パナマ駐在の米国大使館を訪れ、最近逝去した米国のジミー・カーター元大統領を追悼する言葉を残した。大使館がX(旧ツイッター)に投稿した写真によると、ムリーノ大統領は「世界の人権擁護者だったカーター元大統領は、パナマ運河譲渡条約に署名した」とし、「パナマ政府と国民を代表して、心からの哀悼の意を表する」と記した。カーター元大統領とパナマのオマル・トリホス元大統領は1977年、パナマ運河を通過する船舶の規制や運河の管理、運営、改善、保護、防衛など、米国政府が握っていた運河管理権をパナマ政府に完全移譲する「新パナマ運河条約(トリホス・カーター条約)」を締結した。
これを機に、1914年からパナマ運河を建設・運営してきた米国は、1999年12月31日正午をもって運河の管理権をパナマに完全移譲、数十年にわたり運河に駐留していた米軍も撤退した。