中国の習近平(シージンピン)国家主席が、米国のドナルド・トランプ次期大統領の就任式に高官特使を派遣する方針であると、英紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」が10日(現地時間)報じた。
中国はこれまで米大統領就任式に、ワシントン駐在大使を通じて出席してきた。FT紙は「習主席の高官特使派遣は、トランプ政権2期目の発足に合わせ、両国間の摩擦を軽減しようとする前例のない試み」と分析した。
FT紙は複数の情報筋の取材を基に、「中国側は、20日のトランプ氏就任式に、習主席の代理として中国高官が出席すると、トランプ移行チームに伝えた」と報じた。この特使は、トランプ移行チームとも会談する予定だという。
先にトランプ氏は、習主席を就任式に招待していた。この異例とも言えるトランプ氏の動きは、初任期中に行っていた習主席との交流を再開する意思表示と解釈された。中国側も11月の大統領選結果が出る前からトランプ側近との接触を模索し、トランプ氏のホワイトハウス復帰後、貿易摩擦が激化する可能性に備えていたとされる。
特使として、韓正(カン・セイ)国家副主席や、王毅(ワンイー)共産党中央外事工作委員会主任兼外相の名前が挙がっている。韓副主席は、公式行事で習主席の代理を務めることが多い。ある関係者は、トランプ側近が韓副主席や王外相よりも、より強い権限を持つ蔡奇(サイ・キ)共産党中央弁公庁主任(習主席の首席秘書官に相当)を望んでいるとの情報も伝えた。
別の関係者は「トランプ氏が中国指導者を招待した以上、特使の格が低ければ不満を抱く恐れがある」とし、「中国が関係を適切に始めるには、然るべき地位の人物を派遣する必要がある」と語った。
一方、習主席自身が出席する可能性は極めて低いとの見方が強い。元ホワイトハウス中国担当上級補佐官のデニス・ワイルダー氏は「習主席が直接出席することの国内的リスクを冒すには、トランプ氏があまりに予測不能と判断したのだろう」と述べ、「習主席は相応の地位にある特使を派遣し、トランプ氏および閣僚と会談させることで、空手で帰国したり公に恥をかいたりするリスクを避けつつ、トランプ政権と良好なスタートを切りたいというメッセージを示せる」と分析した。