ドナルド・トランプ大統領が、戦線を凍結する形でウクライナ戦争の終結を推進するとの見方が広がる中、ウクライナとロシアは一寸の領土でも確保しようと激しい戦闘を繰り広げている。ウクライナの占領地を大幅に拡大したロシアが停戦交渉で優位に立ったとの分析が出ている。
米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」の最新分析によると、昨年ロシア軍は合計2,700平方キロメートルのウクライナ領土を新たに占領した。これは前年に占領した面積(465平方キロメートル)の約6倍に相当する。現在までにロシアが占領したウクライナの領土面積は合計11万649平方キロメートルで、2022年のロシア侵攻前のウクライナ領土(60万3,550平方キロメートル)の18%に達する。
本土奪還ではなくウクライナ東部への攻勢を強化したロシアの戦術が功を奏したとの評価が出ている。昨年8月、ウクライナは自国の東部前線に集中しているロシア軍の分散を狙い、ロシア南西部のクルスク州を奇襲攻撃し、一時1,171平方キロメートルを占領する成果を挙げた。これはロシアが第二次世界大戦以降、事実上初めて敵に領土を譲った事例として記録された。しかし、ロシアはクルスク州奪還作戦よりもウクライナ東部ドネツィク州への攻勢に注力した。ドネツィクに軍を駐留させ、ウクライナを圧迫する方が戦術的に有利だと判断したためだ。現在ロシアは東部ドンバス(ドネツィク州・ルハーンシク州)の80%以上を掌握しており、ドネツィクの兵站要衝であるポクロフスクの占領も目前に迫っている。
ロシアは北朝鮮軍の派兵に助けられ、ウクライナのクルスク占領地の半分以上を奪回することにも成功した。約700平方キロメートルを奪還した状態だ。ロシア軍は北朝鮮軍兵士を人海戦術式の弾除けとして消耗させる歩兵突撃を続け、ウクライナを圧迫している。米当局は2か月以内に北朝鮮が追加派兵を行い、ロシアが数か月以内にクルスク奪還に成功するとの見通しを示した。
一方、ロシアは2014年に強制併合したクリミア半島とともに、ドネツィク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンなどロシアが占拠したウクライナ領土に対する主権を認められる場合にのみ、ウクライナとの和平交渉を受け入れるとの立場を表明した。