ビッグテックと米金融界は、第2次トランプ政権の実力者であるテスラCEOイーロン・マスク氏が所有する企業との提携に乗り出している。マスク氏がドナルド・トランプ大統領就任後、ホワイトハウスの諮問機関「政府効率部(DOGE)」の長官を務め、連邦政府の人員削減によるコスト削減を主導するなど、強大な権限を行使しているためだ。
3日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、アメリカの企業はマスク所有の企業との関係改善に積極的に動いている。マスク所有企業との契約を撤回または遅延させると、報復を受ける可能性があるという不安が広がっている。
アップルは、米通信大手T-モバイルと共同で、マスク氏の宇宙企業スペースXの衛星インターネット「スターリンク」をiPhoneで利用できるようOSを更新した。また、企業向けソフトウェア大手オラクルとインテルも、それぞれスターリンク、Xとの協力を発表した。市場調査会社「センサータワー」によると、ソーシャルメディア「X(旧Twitter)」を敬遠していた世界最大のEC企業アマゾンは、今年1月にXへの広告費支出を前月比10倍に大幅増加させた。
米金融界は、2022年10月のマスク氏によるX買収時に発行された債券の取得に動いている。JPモルガン・チェースは、マスク所有の電気自動車メーカーテスラが新株引受権契約に違反したとして1億6,200万ドル(約247億2,400万円)の支払いを求めていた3年前の訴訟を取り下げた。JPモルガン・チェースの訴訟取り下げは、トランプ大統領の大統領選勝利とマスク氏がその勝利に大きく貢献したとされることが背景にあるというのが大方の見方だ。もちろん、JPモルガン・チェースはトランプの大統領選勝利と訴訟取り下げは無関係だとの立場を取っている。
この件に関し、JPモルガンCEOのジェームズ・ダイモンはCNBCのインタビューで、自身とマスク氏が数年来の不和を解消したと述べた。さらに、国際決済大手ビザはマスク所有のXと提携し、年内にデジタル決済機能などを含む金融サービスの提供を開始する予定である。
航空各社もスペースXに注目している。ユナイテッド航空は、マスク氏が率いる宇宙企業スペースXと提携し、今春から機内でスターリンク衛星インターネットサービスを提供する。すでにハワイアン航空など一部の米航空会社はスターリンクを導入済みだ。宇宙産業でスペースXとライバル関係にあるボーイングも、大統領専用機エアフォースワンの製造遅延問題の解決に向けてマスク氏との協議を始めた。
アリゾナ州立大学のジョナサン・バンディ教授は「第2次トランプ政権におけるマスク氏の影響力を考えると、このように関係強化を図る企業には政治的利益が得られる可能性が高い」と指摘している。