ウクライナ戦争の物語を書き換えるアメリカ…「必ずしもロシアが侵略したわけではない」

2022年2月のロシアによるウクライナ侵略から3年が経過し、これまでウクライナを支援し団結してきた米国が、異なる見解を示し始めている。ドナルド・トランプ米大統領がロシアとの停戦交渉を推進する中、この戦争がロシアの現状変更の試みや、一方的な侵略から始まったという「事実」への言及を避けている。これにより、「ある主権国家が他の主権国家を武力で侵略することはできない」という戦後の世界秩序の基本原則が揺らいでいる。中国や北朝鮮など、インド太平洋地域で現状変更を狙う国々に誤ったシグナルを送る恐れも出てきた。
スティーブン・ウィトコフ・ウクライナ問題担当特別代表は23日、CNNのインタビューで、ロシアの戦争責任を否定するかのような発言をした。「必ずしもロシアが戦争を引き起こしたとは思わない」と述べ、ウクライナのNATO加盟議論が「ロシアにとって脅威となった」と指摘した。これはロシアのプーチン大統領はNATOの東方拡大に極めて敏感であり、NATO加盟を推進したウクライナのゼレンスキー大統領も一因を作ったという解釈が可能だ。トランプ大統領も最近、ゼレンスキー大統領を「ただの成功したコメディアン」と表現し、ロシアとの交渉に応じない点を批判。さらに「独裁者」とも呼び、経済的搾取に近いとされる鉱物協定の締結を迫っている。
安全保障のトップであるホワイトハウスのマイク・ワルツ国家安全保障顧問は、フォックス・ニュースのインタビューで「ロシアがウクライナを侵略したと認めるか」という質問に対し、明確な回答を避けた。そして「ウラジーミル・プーチン、金正恩、習近平といった人物と対峙するなら、誰と共に挑みたいか。ジョー・バイデンか、トランプか」と反問した。ワルツ氏は「トランプは最高の交渉人だ」とし、「米国が現在の立場にいられるのは彼の力のおかげだ」と述べた。ピート・ヘグセス国防長官もフォックス・ニュースで「ロシアの侵略認定をためらっている」との指摘に対し、「『あなたは悪い独裁者だ』『あなたが侵略した』と言うのは有益でも生産的でもない」とし、「トランプは不要な方向に引きずられることなく、その結果、米国はかつてないほど平和に近づいている」と語った。
米国は国連安全保障理事会の常任理事国として、ロシアのウクライナ侵略(aggression)という表現を決議案に盛り込むことにも反対している。これに対するロシアの反発が、トランプ氏がプーチン氏と目指す停戦交渉の障害になると見ているためだ。一度先例ができると、今後、国際社会が北朝鮮の核・ミサイル挑発や南シナ海・東シナ海・台湾海峡における中国の覇権主義などを指摘し責任を問うことが難しくなる可能性がある。米国主導の戦後の世界秩序の最大の受益国である日本を含むアジアの同盟国は、より大きな打撃を受ける恐れがある。トランプ氏はすでに就任後、パリ気候変動協定などから脱退し、最近では南アフリカの内政問題を理由にG20外相会議への不参加を表明した。米議会ではマイク・リー共和党上院議員が米国の国連参加停止を内容とする法案まで提出している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「トランプ氏のウクライナ戦争へのアプローチが日本や韓国など、米国のアジア同盟国にも不安を広げている」と報じた。