アメリカ・メキシコ・キューバに隣接するメキシコ湾の地域において、イルカから「ゾンビドラッグ」と呼ばれるフェンタニル成分が検出された。
13日(現地時間)、米「テキサスA&M大学」の研究チームは「自由に泳ぐハンドウイルカ(Tursiops truncatus)の脂肪層に含まれる医薬物」というタイトルの研究論文を国際学術誌「アイサイエンス(iScience)」の最新号に掲載したと発表した。
オンラインで事前公開された論文によると、研究チームは89頭のイルカのうち30頭から、麻薬性鎮痛剤「オピオイド(opioid)」を含む3種類の薬物成分を検出した。オピオイド系麻薬のフェンタニルは、イルカの死体6体と生存個体18頭から検出された。
フェンタニルはオピオイド系の強力な麻薬性鎮痛剤で、その効果はモルヒネの100倍以上、ヘロインの50倍以上とされる。フェンタニルは中毒性が非常に高く、健康な一般人でもわずか2mgの微量で致命的な結果を招く可能性がある危険な薬物だ。2021年、アメリカで最も多くの過剰摂取による死亡者を出した薬物であり、1年間で7万人以上がフェンタニル過剰摂取で死亡したとされる。フェンタニル中毒者はゾンビのようにふらつくことから「ゾンビドラッグ」とも呼ばれている。
この致死的な薬物が他の海洋生物にも影響を及ぼす可能性が懸念されている。ただし研究チームは、イルカの死体から検出されたフェンタニルの痕跡が必ずしも死因ではないと付け加えた。研究を主導したダーラ・オーバック博士は「ハンドウイルカは汚染物質研究における重要な生態系指標種だ。汚染物質が蓄積される豊富な脂肪層を持ち、生きた動物から最小限の侵襲的手法で組織を得られるためだ」と説明した。
研究チームは、石油流出や藻類の大量発生など環境リスクが比較的高い地域に生息するイルカの組織サンプルで、薬物検出率がより高かったことも明らかにした。ただし、海洋哺乳類における薬物の慢性曝露と蓄積効果がまだ十分に解明されていないため、この分野での大規模研究の必要性を強調した。
オーバック博士は「人口が比較的多い地域や漁業・養殖業が行われている地域での薬物流入経路の分析が重要」とし、「イルカが人間と同様に魚やエビを食べることを考えると、海洋中の薬物は人間の健康にも潜在的な影響を及ぼす可能性がある」と付け加えた。