中国四川省のある火鍋(中国式鍋料理)レストランが、客が食べ残した麻辣湯の油を再利用し、新たな客に提供した疑いで、当局から処罰を受けた。いわゆる「唾液油」事件により、中国国内で食品安全への懸念が再燃している。
先月31日、「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)」と四川省南充市市場監督管理局によると、ある火鍋店が「使用済み油」を再利用し、火鍋のスープに混ぜて使用していた事実が発覚した。当局は、客からの通報を受け、この店の調査に着手した。
当局は、レストランの厨房から再利用された牛脂11.54kgを押収。また、正規に購入した包装済み牛脂とは異なる形態の牛脂が含まれたスープ鍋4つが確認された。調査の結果、このレストランでは、数か月にわたり組織的に油を再利用していたことが判明した。
店主のチョン氏は「9月から客の残したスープから唐辛子油を抽出し、新しい油と混ぜて使用していた」と認め、「料理の味を改善し、業績不振を回復させるためだった」と説明した。また「新型コロナ以降の経営難により、コスト削減が避けられなかった」と釈明した。
南充市市場監督管理局は再利用された油をすべて押収し、事件を地元警察に送致した。中国の食品安全法は2009年の施行以来、食べ残しの再利用を禁止している。
注目すべきは、四川省と重慶市の一部のネットユーザーが「新しい油と古い油を混ぜることは伝統的な慣行だ」と主張し、「こうした油なしでは火鍋の味がでない」と述べたことだ。一部の人々は「115度以上の高温加熱と、ろ過を行えば問題ない」との意見も示した。
食品安全専門家のワン・ゼンミン氏は「伝統という名目で食品安全を脅かす行為は、厳しく処罰すべきだ。特に感染症リスクを伴う食品の再利用には一層の警戒が必要だ」と指摘した。中国刑法によると、食品販売目的で有害な原料を混入した者は、罰金刑に加え最大5年の懲役刑に処される可能性がある。